♪ dream
□3 花と星の物語
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「ほら、ここをもっとちゃんと手で押さえないから
うまく回らないんだよ」
太助はそういって独楽を奪い取った。
「太助ちゃん、痛い!」
「女のくせに男に交じって独楽なんてするんだから、
ちょっとくらい我慢しろ」
寺子屋には男も女も通っていたが、
大抵は男同士で外で遊ぶ。
しかし、この少女は違った。
「そんな風に言うから太助ちゃんは女の子に怖がられるんだよ」
ぶっきらぼうに話すせいか、同じ級の女子から敬遠されがちな太助に
屈託なく話しかけてくるのはこの子くらいだった。
男勝りという訳でもないが、
同じ部屋にいるだけで雰囲気がぽっと明るくなる気がした。
「別に、怖がられたって痛くも痒くもねーやい」
「太助ちゃん、本当はやさしいのにもったいないの」
「うるせえな、きゃあきゃあ騒いでないで、早く教えた通りに練習しろ」
太助は胸に湧き上がってくる温かいものを押し込めるように
ぎゅっと口をへの字に結び、石ころを蹴った。