★ dream
□マメシバ(前)
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「ちょっと、お嬢さん、ここは警視庁の試験会場ですよ」
名前はいかにも疲れた顔をした中年の警備員にとめられた。
受験会場の地図と、看板を比べて
「はい、知ってますけど……」
と不思議そうに首をかしげる。
「いや、あなた、女の子でしょ?」
「はい」
名前は素直に頷いた。
二人の横を受験生たちが興味深々な目で見ては通り過ぎていく。
見世物になっているようで、名前は少し恥ずかしかった。
しかし、中年の警備員の次の言葉で
名前のちょっとした恥じらいなど消し飛んでしまった。
「警視庁は女の子を募集してないよ」
「えええええええええええええっ?!」
これほど驚き、これほど大声を出したことがあっただろうか
というくらい、名前は理性を失っている。
これまでの物語が全部夢だった、というオチよりも
今まで肉だと思っていたカップ麺の具が
肉ではなかったことを知ったときよりも
驚愕したのだった。