舞台裏

□先輩3
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やっと日が上り始めた早朝。
周りを林に囲まれた広大な屋敷の周囲を、ミリツィア実働部隊の面々が息を潜めて取り囲んでいた。

この建物は、マフィアの大物の別宅と目されているものだ。
双子の兄弟が頭首のファミリーで、十年以上前から何とか解体させる機会はないものか、とミリツィアが虎視眈々と狙っていた。
内部分裂により頭首が大怪我を負い、組織が浮き足立ってる今は絶好のチャンスなのである。

建物はシンと静まり返り、人の気配は全く感じられない。

「情報が漏れてたか?」
木の陰に隠れる様にして屋敷の様子を伺っているミハエルが、小声で話し掛けた。
「いや、それは無いと思うんだが…」
同じ様に木に背を預け、屋敷に注意を向けているイリヤが応える。
「むしろ、一足遅かった、っつー感じがするんだよな。」
苦虫を噛み潰したような顔で、言葉を続ける。
「多分、いつまでこうしていても、ラチがあかねーよ。
 ちと、隊長に直談判してくるわ。」
そう言い残し、イリヤはその場を離れた。

しばし後、戻ってきたイリヤは
「切り込むぜ。
 一番乗りだ。」
ニヤリと笑ってミハエルを促した。
「おう!!」
勿論、ミハエルもニヤリと笑ってそれに応える。

ミハエルは慎重な足取りで屋敷に近付くと、玄関扉を背にしノブを軽くひねる。
それは、何の抵抗も無く、鍵がかかっていない状態であった。
自分とは扉を挟んで反対側にいるイリヤに頷く。
そのまま扉を少しだけ開けるが、室内からは何の反応も無い。
イリヤがその隙間に銃口を差し込み、足で蹴り開ける。
「動くな!!
 警察だ!!」

屋敷の玄関ホールはシンと静まり返り、やはり人の気配は感じられない。
それでも数分間、銃を構えながら2人は辺りの様子を伺った。

「やっぱ、一足遅かったみたいだな。
 情報が漏れて慌てて引き払ったにしては、あまりにも整然とし過ぎてる。」
チッと、忌々しげにイリヤが舌を鳴らした。
ミハエルは外に出ると、様子を伺っている他の隊員に合図を送る。

「何も出ねーと思うけど、家捜ししてくるわ。」
そう言うと、イリヤは玄関ホールから2階へと続く階段の方に向かう。
「あ、おい、待てよ。」
ミハエルが慌ててその後を追いかけた。
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