ウサッビチ1
□プロローグ
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パァン…
銃声が上がると蒼穹を舞っていた射撃用の白い的が砕け散る。
パァン…
パァン…
パァン…
続け様に銃声が轟き、空には何も無くなった。
射撃の大会会場で、コプチェフは呆気にとられてそれを見ていた。
『なんつー、的確なタイミングだ、くそっ!!
俺だって、あのタイミングじゃああも正確には撃てないぜっ』
それは、嫉妬を覚える程見事なものであった。
『今撃ってんの、誰だよ!?』
慌てて大会スケジュールを確認する。
『ボリス=ガンスカヤ
多分、こいつだ
こんな名前、見たこと無いな
まさか、あの腕で初出場なのか!?』
パァン…
パァン…
会場には、まだ銃声が谺している。
微かに起こるどよめきは、賛辞のものに違いなかった。
コプチェフの席からだと、遠すぎて銃を撃っている人物はよく見えないが、それでもあまり大柄な感じには見受けられない。
スケジュール表に載っている簡単なプロフィールを見ると
『俺より1こ下かよ』
思わず、チッと舌打ちがもれた。
小さな写真の中で、こちらを睨むような鋭い眼光をみせる人物の顔を、コプチェフは苦々しい思いで見つめる。
『こりゃ、今年の首位の座は危ないかも…
以降の競技、ぜってーミスれねー』
気を引き締めると、次の競技場所に移動するため立ち上がった。