ウサッビチ1

□6
1ページ/9ページ

ミリツィアに新規生が入ってから、8ヶ月が過ぎた。
そろそろ運転組と狙撃組、どちらの組に入りたいか決まってくる者も多く、自分の入りたい方の訓練がやりやすいよう、自習の時間が増えてきた。

コプチェフは今日もニコライと一緒に自習の時間を過ごしている。
「お前さー、最近太ってきたよな。
 幸せ太りってやつ?」
ニコライとレオニードが上手くいってる事を知っているコプチェフが、ふざけた調子で腹をつつく。
「あ、そうなんだよ。
 制服、直さないと着れなくなっちゃって、全部直してもらったんだ。
 私服もほとんど買い直したし、参ったよ。」
ニコライは照れた顔でハハハっと笑い、頭をかいた。

しかし太った、といっても元々が痩せ過ぎであったし、日々の訓練、重いタイヤや工具を運んでの車の整備、といった生活で付いた肉は筋肉ばかりであり、むしろ逞しくなった、と言った方が良い変化である。
お坊ちゃん風にキッチリ切りそろえられていた前髪は、レオニードによって整えられ、精悍な雰囲気に変貌していた。
眼鏡のフレームは大きなものから細身のものに変わり、鋭い印象を与えるようになっている。
軍家の出、ということを知っているせいか、軍の高官のような雰囲気を醸しだすようになっていた。

しかし
「最近、食事の量が増えたからかな。
 誰かと一緒に食べる食事って、凄く美味しいよね。」
照れたように笑いながら話しかけてくる顔は、以前のニコライと何等変わるところは無く、コプチェフは何だかホッとする。

「レオニードは積極的だし、良いよな〜。」
大仰に溜め息をつくコプチェフに
「でも、君だってボリスと、その…
 いい感じでしょ?
 日曜に、よく一緒に出かけてるじゃない?」
慌ててニコライが言い募る。
「カフェにランチ食いに行ってるだけだよ。」
溜め息と一緒に、コプチェフはボヤいた。

「え?
 街に出たり、とかしてないの??」
ビックリ顔のニコライに
「一回も、んなとこには行ったことねーよ。」
渋い顔でコプチェフは答えた。
「あ…、そうなんだ……」
ニコライはそれ以上何と言ったら良いのかわからず押し黙ってしまう。
「もっかい走らせてみるからさ、ちょっと見ててくれよ。」
そんな話題を断ち切るように、コプチェフが明るく言った。

その会話は、レオニードの知るところとなる。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ