舞台裏

□同期1
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山間部に建つ民主警察『ミリツィア』。

周りを緑に囲まれているが、憩いの場として建物内に中庭がある。
ちょっとした木々や花壇、植え込みの側にはベンチが設置されていて、天気の良い日はそこでランチをとる者もいた。
しかし、天気は良いものの、まだ肌寒い気候であるため、今の時期に利用する者はほとんどいない。

昼休みのその人気のないベンチに、一人の新規生が腰掛けてカップに入った飲み物を飲んでいた。

『ニコライ=ラベラスキー』

うなだれている、とも見えるくらい猫背になり、ぼんやりと両手で持ったカップを見つめている。
お坊ちゃま風にきっちりと切りそろえられたダークブラウンの前髪、大きなフレームの眼鏡、痩せすぎの体型、いかにも、という感じの優等生であった。

新規生としてミリツィアに入隊して半月が過ぎたが、未だ同期と上手く打ち解けられず、ランチを共にする者もいないため、こうして一人で過ごす時間が多かった。
彼の家系は軍の高官を多く輩出しているので、それを知っている同期からは遠巻きにされるか、取り入ろうとされるかのどちらかが多い。
ニコライ自身は弱気なところがあり、あまり人付き合いが上手い方ではないから、何となく浮いた存在になってしまっているのだ。

「ふう…」
つい、溜め息をついてしまう。
『このまま、ここにいて良いのかな…
 僕なんかじゃ、ペア組んでくれる人いそうにないし…』

同期と打ち解けられない他にも、彼には悩みがあった。
ニコライがミリツィアに志願した理由は、弱気な彼には不似合いなものである。
『憧れのレーサーがいる』ためだ。
遠くからでも一目見れるんじゃないか、とか、もしかしたら建物内ですれ違う事が出来るかも、といった実にミーハーなものであった。

家の者は当然『軍』に入隊させたがっていたが、弱気な彼が珍しく強く希望したため、試験を受ける事が出来たのである。
見事合格出来たし、成績面での不安は無いものの、今の状態ではここで使い物になるのか、自分でもかなり怪しいと思っていた。
車好きの彼としては、本当は車の整備士として働きたかったのだが、整備士の公募は無かったし、さすがに整備士では家の者も納得しないだろう事はわかっていた。

件の憧れのレーサーはといえば、一目見るどころか、自分たち新規生の技術担当官であり、直に運転技術を学べる立場である。
入隊式の後、教室での説明会で彼の姿を見れた時は、驚きのあまり不躾なほどジロジロと見つめ、視線を送ってしまった。
それがまずかったのか、彼の恋人である体力訓練担当官に、何だか厳しく当たられている気がするニコライである。
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