舞台裏
□同期2
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先輩達が一斉検挙で出払い、1日自習になった日に、そのチャンスは巡ってきた。
コプチェフが執心しているボリスを迎えに、一緒に射撃場に行った時のこと。
射撃場にはボリスの代わりにレオニードがいた。
取り巻きの一人と一緒であったが、どうもあまり良い雰囲気とは言えない感じなのである。
しつこく『街へ出よう』と誘う相手に、レオニードは困惑している。
「おい、お前助けてやれよ。」
隣に立つコプチェフにそんな事を言われても、ニコライにはどうすれば良いかわからなかった。
「お前が先に誘ったフリすりゃ、大丈夫だって。
いざとなったら、俺も出て行くから行ってこい。」
コプチェフに背中をドンと押し出され、その勢いのままニコライは最初の一歩を踏み出していた。
ヨロけながら室内を進み、震える声で何とか
「や、やあ、レオニード。
遅いから迎えに来たんだ。」
と話しかける。
一瞬、レオニードに訝しげな顔をされてしまい、ニコライは
『やっぱり僕なんかじゃ…』
と後悔するが、すぐにレオニードが駆け寄って腕を絡ませてきた。
体温を感じるくらいピッタリと密着してくるレオニードに、ニコライはドキドキする。
「ごめんなー、ちょっと手間取っちゃって。」
甘えるように肩に頬を擦り寄せてくるレオニードの輝くブロンドの髪に、更に心臓の鼓動が早まってしまう。
納得がいかない顔の取り巻きが睨んでくるが、やっと扉の側にコプチェフがいる事に気が付き、チッという舌打ちとともに去って行った。
取り巻きが去ってしまうと、ようやく場の空気が和んだ。
「助かったよ、ありがとなー。
最近ちょっとしつこくてさー。」
まだ、ニコライに腕を絡めながら、レオニードがコプチェフに話しかける。
「ボリスなら、ちょっと早めに上がったよ。
今日はゆっくり出来るから、いつものカフェに行くってさ。」
レオニードも、何のためにコプチェフが射撃場まで来たか、十分承知していた。
「そっか、ありがとなー。」
ボリスの情報を手に入れればもう用は無い、とばかりにコプチェフはニコライとレオニードに手を振ると、射撃場からガレージへと小走りに去って行った。