舞台裏
□同期3
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前方に実習車の列が見えてくる。
遅れて出発したニコライ達であったが、今日の実習は5分おきに1台の車が実技をして回るため、先に出発した車に追いついたのだ。
新規生は50人いるため25組あるので、全員が実技に入るまで2時間以上かかる。
待ち時間の間に、レオニードが銃の整備を始めた。
「オレ、動いてる的とか、自分が動いてる状態で撃つとかって、苦手なんだよな。
今日の成績も悪いんだろうなー。」
ボヤキ気味に言う。
「じゃあさ、的のリボンが見えたら減速するよ。
少しでもゆっくり走った状態から撃てば、当たるかもしれないし。」
ニコライが提案した。
「え、でも制限時間あるだろ。
30分以内に走りきらないと失格だって。
地図で見るこの距離だと、30分ってけっこーギリギリじゃん。」
優等生の大胆な提案に、ギョっとしながら答えるレオニード。
「的と的の間を加速して、時間調整するよ。
少し飛ばすから、揺れるかも。
舌、噛まないよう注意してね。」
秘密の冒険を企む少年のように、ワクワクした顔でニコライは言った。
「それって『動き出さないと始まらない』ってやつ?」
レオニードも、何だか気分が高揚してくる。
「うん。
『上手くいかないかもしれないけど、何もしないよりずっと良い』んだよ。
やってみよう!!」
ニコライはニッコリと笑う。
自分の言った何気ない一言が、この内気なお坊っちゃんにこんなにも行動力を与えていたのかと、レオニードは面映ゆくなった。