舞台裏
□同期5
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それから大部屋から寮への引っ越し終了まで、慌ただしく時が流れた。
荷物の運び入れが終わり、出発式の日になると、やっとホッとした雰囲気が新規生の間に流れる。
出発式の食堂では、好きな料理を取り分けながら、和やかに笑いあう声があちこちから響いていた。
パイやケーキで山盛りの皿を前に、レオニードはミハエルの隣に陣取り、2人で盛り上がっている。
「だからよ、俺が熱心にリクエストし続けたおかげで、ここのデザートメニューは随分種類が増えたんだ!!
あのアプリコットタルト、絶品だろ?」
ミハエルが、同じくスイーツで山盛りの皿から次々とケーキ類を口に運び、得意そうに言う。
「そうだったんだ!!
ベイクドチーズケーキも、あのこってり具合が堪らないよね!」
レオニードも負けじとパイを頬張りながら答える。
「お前が入隊したおかげで、さらに種類が増えて嬉しいぜ!
食堂のおばちゃん達も、作り甲斐あるって喜んでるしな。
今度さ、新作の試食会に呼んでくれるってよ!」
「マジッ!?
嬉しいなー!!
腹空かして行かなきゃ!!」
そんな2人を、レオニードの隣に座ったニコライが、ニコニコしながら見ていた。
ニコライの皿には、チキン、ビーフ、キノコサラダ、パンがのっている。
豆のシチューの皿も、側にあった。
少食だったニコライは、レオニードと食事をするようになってから食べる量が増え、入隊した頃に比べると随分逞しくなっていた。
酒瓶を抱え、ミハエルの隣の席に戻る途中のイリヤが、ニコライに近寄り声をかける。
「よしよし、ちゃんと食ってるな。
最初の頃はヒョロヒョロだったけど、今は随分良い身体になってきたもんな。
そのままちゃんと身体作れよ!」
「はい!!」
ニコライは笑顔で答える。
イリヤは周りの様子を素早く確認し、自分たちに注意を向けている者がいないとわかると、座っているニコライの耳元に唇を寄せて囁いた。
「お前、家に帰れば軍の情報手に入るか?」
ニコライの表情が固まる。
それでも気弱な小声で
「ある程度なら…」
と答えた。