舞台裏

□先輩3
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全部で何部屋あるかわからない広大な屋敷の2階廊下を、奥に向かってミハエルとイリヤは歩いて行った。
豪奢な屋敷のわりに、調度品の類は少ない。
引き払った際に持ち出されたのだろう。

何部屋かの扉を開けてみたが、誰も居なかった。
「犯罪の証拠になりそうな物は、何も出そーにねーな。」
イリヤはボヤく。
「そうだな。」
ミハエルも渋い顔だ。

「ん?」
突き当たりにある扉が他の部屋のものと違うことに、イリヤはすぐに気が付いた。
頑丈そうな鍵が5個も付いている。
しかしそれは、扉の外からの物であった。
中に入っているものが、外に出ようとすることを阻止するためとしか思えない。
ノブを捻るが、この扉だけは開かなかった。
扉に耳を近付けて中の様子を伺うも、他の部屋と同じ様に人の気配は感じられない。

しばし躊躇した後、イリヤは外鍵を次々と開けていく。
『カチリ』と最後の鍵が開く音が響いた。
緊張しながら扉を開く。

室内は、他の部屋とあまり変わらない作りであった。
しかし、他の部屋には無い物があるようだ。
ベッドのシーツが盛り上がっている。
明らかに、シーツの下に何かが置いてあるのだ。

2人に緊張が走る。
銃を構えながらゆっくりと近付いて、ミハエルが銃口でシーツを捲り上げた。

そこには、1体のミイラが横たわっていた。
「ふう、驚かせやがるぜ。」
緊張で流れた一筋の汗を、腕で乱暴に拭うと
「ったく、御大層なシュミしてやがんな。」
ミハエルは毒づいた。

「まて。」
イリヤの緊張は解けない。
「包帯がキレイだ。」
ミハエルはギョッとした。

言われてみれば、その包帯は真っ白く新しい物であり、その形状はミイラというには何だか肉付きが良かった。
「ヘマして殺された部下か?」
ゴクリとミハエルが唾を飲む。
「だとしたら、殺人の重要な証拠品だ。」
イリヤが続けた。

意を決して、イリヤがそのミイラの頭部と思しき包帯部分を緩ませる。
その下から出てきた顔を見て、2人は息を飲んだ。

「おい!
 コイツは!!」
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