舞台裏

□先輩4
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当日、玄関先に集まったカンシュコフ5人組。
内勤が多く退屈していた彼等は、いつもとは違う仕事になりそうだとワイワイと浮かれていた。

「実技実習採点補佐って、何やんだろーな?」
「実働部隊の奴となんて、口きいたことないよ。」
「この時間に外に出るなんて、なかなか無いよな。」
「今日のランチのミートパイ美味かった〜。」
「うお、何かデケー鳥が飛んでんぞ。」
実にかしましい。

そこへ、2台の車がやってきて5人の側に止まった。
車から下りてきたのは、身長2メートル近くある大男だった。
黒い髪に黒い目、盛り上がった筋肉が服の上からも見てとれる。
ヒグマのような迫力のその大男を見て、5人組は怖じ気づく。

もう一台、新規生用実習車から下りてきたのは、自分たちより小柄で、サラサラした茶色い髪に幼さの残る大きめの目をした人物だった。
2人を見比べて、5人はどちらがボスか瞬時に判断する。

もちろん、大男の方だ。

「狙撃組所属のミハエル=アルシャーヴィンだ。
 今日はわざわざ来てもらって悪いな。」
大男、ミハエルが話しかけてきた。
5人組は緊張して敬礼し
「いえ、任務ですから。」
畏まって答える。

そんな5人組にミハエルが
「今日やってもらいたいことは単純だ。
 ここに25色のリボンがある。
 これと同じリボンが、地図の印が付いている辺りの木にくくり付けられている。
その木に、リボンと同じ色のペイント弾が何発着弾しているか、数えてもらいたいんだ。
 リボンは全部で各10本、設置順に番号が赤字で書かれているから、その側にこれで着弾数を書き込んで回収してきてくれ。」
見本のリボンと供に、黒いマジックが5本手渡される。

「日が暮れるとリボンが見えなくなるから、夕方までには作業を終えるよう頑張らないと厳しいぞ。
 移動用に実習車を貸してやるから、急いで回れ。」
ミハエルが顎で実習車を示す。

「イリヤ、地図を。」
「はい。」
ミハエルに命令され、しずしずと小柄なイリヤが地図を5人に配って回る。
その地図は、ミリツィアの建物を取り囲む形の山道のもので、所々に大雑把な○印が10ヶ所付けられ『この辺』などと書いてある、なんとも切ないものであった。

5人組の顔が固まる。
「俺たちはこれから出動するが、夕方には戻ってくる。
 お前たちも夕方迄には戻って、ガレージに車を戻しに来てくれ。
 そこでリボンを受け渡ししてもらう。
 以上、質問は?」

この地図に突っ込みを入れても良いものかどうか判断が付かず、押し黙る5人組。
「無いようだな。
 なら、さっさと出ないと間に合わないぞ。」
ミハエルのその言葉に5人組は
「行ってきます!!」
と弾かれたように実習車に乗り込んで、その場を去っていった。
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