ウサッビチ4

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検問所にはコプチェフ、ボリスの同期に加え、ユーリやイヴァンといった新規生達が控えていた。
隊長代理を務めているヤンとサーシャが直々に指揮をとっている。
04号囚人を逃がさないという決意に満ちあふれた配置であった。


検問中であった隊員達は、緊急ミーティングのため集合していた。
「今、別働隊から連絡があった。
 逃走ルートからして、奴らは確実にこっちに来る。
 あの街にはズルゾロフファミリーがいるからな。
 自分を陥れたズルゾロフに、04号囚人が復讐を企ててもおかしくない。
 そうなると、街が大荒れになる。
 ここで確実に食い止めるぞ!」
力強いヤンの言葉に
「了解!」
隊員達は決意を持って答えを返す。
「僕たちの同期、アイザック達にはこことは反対側で検問してもらってたけど、至急こっちに向かってもらうよう手配したよ。
 でも、距離がありすぎるから間に合わないかも。
 万が一、街に入り込まれたときのため、街を流してる先輩達に応援かける訳にはいかないから、気合い入れないとね。」
柔らかなサーシャの言葉ではあったが
「はい!」
隊員達は緊張とともに返事をする。

「それじゃ、検問再開するぞ。
 パニックを避けるため、あくまでも交通安全強化の検問だと説明するんだ。
 不審車両は俺達が担当するから、怪しい奴が乗っている車を発見したら声をかけてくれ。」
ヤンはそう言ってサーシャと共に自分達のラーダカスタムに乗り込むと、無線を手に取り情報収集を開始した。
「ロウドフ先輩、軍との揉め事はどうなりました?」
『ニコライの説得が効いたのか、引き下がってくれたよ。
 ラベラスキー家の威光はだてじゃないな。
 こっちの緊急事態もバレてないハズだ。』
ロウドフの言葉にヤンは一時安堵の表情を見せる。
それからゴクリとつばを飲み込み
「イリヤと連絡は?」
この騒動が始まってから、一番気にかけていた事を口にする。
『…ついた。
 今日はもう戻れないが、予定を切り上げて明日の深夜には戻るようにするって話だ。
 「自分達が戻る前に04号囚人を確保してくれていると信じてる」
 これが、イリヤからの伝言だよ。』
無線機からロウドフの言葉が、ラーダカスタムの中に重苦しく響く。
サーシャが労るようにヤンに寄り添った。
自らの恐怖を押し隠し、ヤンは優しくサーシャの髪を撫でる。
「善処するさ。」
短くそう答え通信を終了すると、緊張の溜め息を吐いた。
「死刑宣告くらった気分だ。」
苦笑するヤンに
「善処しよう。」
サーシャは微笑んでソッと唇を合わせた。

新規生が検問に立ち、周りをニコライ達第25期生が固めている。
慎重に行われている問答の結果、検問待ちの車が列をなしていた。
その列を、ニコライとレオニードが先に見て回る。
さりげなく歩きながら脇を通り過ぎるだけなので、車に乗っている者達は自分達が凶悪脱獄犯と疑われているとは思わなかった。
「あいつらは違う。
 ありゃ、ズルゾロフんとこの下っ端だ。」
04号囚人と定期的に面会していて、よく顔を知っているレオニードが囁いた。
「あの人達はマーケットの店員だね、見覚えがある。」
ニコライも注意深く車に乗っている者に視線を走らせた。
「ん?」
そんな2人が、思わず足を止めた車があった。
運転している者は、アフロヘアで鼻の下に浮かれた感じにヒゲを生やしている者であるが、丸く黒いサングラスをかけているため顔がよくわからない。
後部席で雑誌を読んでいる同乗者もアフロヘアであり、目の模様が描かれているサングラスをかけているため、こちらも表情がわからなかった。
「芸人さん?」
思わず呟くニコライに
「見たことないって、あんなコンビ。
 ナンバー控えて、これ、ヤン先輩達に担当してもらおう。」
レオニードがメモにナンバーを書き、それを持って2人は足早にヤンの乗るラーダカスタムに引き返して行った。
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