ウサッビチ4

□5
2ページ/4ページ

「ヤン先輩、このナンバーの車両、ちょっと怪しいんで担当してもらえますか?」
レオニードに声をかけられたヤンが車外に出る。
「どんな奴が乗ってた?」
ヤンの問いかけに
「何か、浮かれた感じの人達でした。
 芸人さんじゃないかと…アフロヘアだから、音楽関係者か何かかな?」
ニコライが首をひねりながら説明する。
「ニコ、あんなわざとらしいアフロ、ヅラだって…」
レオニードが力なく訂正した。
「え?そうなの?
 よくわかったね、レオは凄いなー。」
素直に感心するニコライに
「ニコはお坊ちゃまだな、そんなとこも可愛いけど。」
レオニードは苦笑を見せる。
「はい、イチャつくのは後、後。」
ヤンに続いて車から下りたサーシャが、フフフッと笑いながら声をかけた。
「イリヤと連絡ついたんだ。
 ここで04号囚人を確保しないと、僕たちに未来はないよ?」
サーシャの最終通告のような言葉に、ニコライとレオニードの顔が固まった。
「ソコシャコフで待機します!」
慌てて走り去るニコライとレオニードを見送りながら
「さて、俺達も未来を守りに行くか。」
ヤンはそう呟いて、検問待ちの列に近付いていくのであった。

危険車両として報告のあった車が、検問場所に入ってくる。
周りに待機している新規生達に緊張した空気が流れた。
「すいませんね、交通安全対策強化のため、簡単な質問をさせてもらってるんですよ。
 お急ぎのところ、お手間をとらせて申し訳ありませんが、ご協力ください。」
ヤンが何気ない風を装いながら声をかける。
「まず、免許証を提示してください。」
ヤンの言葉にアフロの運転手は
「あ、あの、その、免許を入れといた鞄を忘れて出てきてしまって…」
オドオドとそう答えた。
「それは困りますね、免許不携帯ですか。
 何か、身分を証明できる物は?」
強い口調になったヤンに
「いえ、あのですね、急いで出てきたので、証明書の類はちょっと…」
運転手は先ほどよりも動揺した態度で答えた。
「それでは、ボディチェックさせてもらいます。
 車から下りて!」
ヤンの命令に運転手がスゴスゴと車外に姿を現した。
運転手をボンネットに手をつかせ、ヤンは危険物を所持していないか念入りに確認し始める。
「ちょ、あの、くすぐったいから、あんまり触らないでくださ…
 ハ、ハハハ、アハハハハハッ!」
警官にボディチェックをされているというのに、体をまさぐられた運転手は呑気に笑い出した。
その様子を側で銃を構えながら控えているサーシャが、油断無く見守っている。

「おい、お前も身分証明書を提示しろ。」
後部席で仰向けに寝ころびながら雑誌を読みふけっている者に、ユーリが声をかけた。
しかし、相手は何の反応も返さない。
「聞こえないのか?身分証明書を出せって言ってんだよ。」
ユーリは乱暴な口調で警告するが、相手は反応しなかった。
「こいつ!」
カッとなったユーリが後部席のドアを開ける。
周りで見守っていたイヴァンや同期の者達が、銃を構えた。
それでも、後部席にいる者は雑誌を読むことを止めなかった。
ユーリはその人物の足を掴むと、そのままズルズルと車外に引き出しにかかる。
雑誌を読んでいる体勢のまま引きずられてくる人物の異常さに、隊員達の警戒が一気に高まった。
後方の騒ぎに気が付いたヤンとサーシャもそちらに移動する。
残された運転手は、まだ身をよじって笑っていた。

「身分証を出すか、そのフザケた眼鏡をはずしなさい。」
銃を構えた警官に取り囲まれているというのに、その人物は一向に雑誌を読むことを止めなかった。
隊員達の緊張が高まった瞬間、馴染みのあるサイレンの音が聞こえてくる。
別働隊であるコプチェフとボリスが検問所に到着したのだ。
ラーダカスタムから身を乗り出して銃を構えるボリスを見た狙撃組新規生から
「ボリス先輩だ!」
ドッと歓声が上がった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ