ウサッビチ4

□8
1ページ/6ページ

04号囚人に脱獄された翌日の朝、ミリツィアではいつもの時間にガレージでの合同ミーティングが行われていた。
「じゃーん、どう?令嬢っぽく見える?」
勤務中には結っているハニーブロンドを背に流し、エレガントなドレスを着こなしたレオニードが隊員達の前でポーズをとっている。
メイクをしているため、一見すると親しい者にもレオニードであるとは気が付かなかった。
その隣には黒いスーツを着て表情の読めないサングラスをかけたニコライがいる。
髪をオールバックに整えているため、こちらも、いつものニコライには見えなかった。
「おお、上出来!良いとこの嬢ちゃんに見えんぜ!」
隊員達から賛辞が飛ぶ。
「先輩達も、警官に見えませんよ!
 このまま連行したいくらいのチンピラっぷり!」
レオニードが二ヒヒッと笑って見る先には、体にタトゥーシールを張り付けたり、ヨレヨレの上着を着たり、いかにもゴロツキ風の隊員達が数多く集まっていた。
「そだ、こうすると、もっとらしく見えるかも。」
レオニードは持っていたポーチからアイシャドウを取り出し、隊員達の目の下に塗り始める。
「うわ、ボリスより目つき悪!」
自分でやっておきながら驚きの声を上げるレオニードに、鏡を持っていない隊員達がお互いの顔を確認し合う。
「うわ、お前、前科5犯は堅いな!」
「そーゆーお前は、終身刑だ!」
人相の悪い男達が和やかにそんな事を言い合っている光景は、異様なものであった。

「先輩方、足りない奴はいますか?
 24期は全員出動しますよ。」
ヤンがアバウトな点呼を始める。
04号囚人確保に燃える隊員達は、前日に怪我を負った者以外、全員出動となった。
「変装してる者はラーダカスタムで移動すると目立つな。
 先輩達、今日は実習車で出てください。
 車体は少し汚した方が、らしくみえるかな?
 レオニードとニコライは、来客用の車を使え。
 こっちは汚すなよ?」
ヤンの指示に隊員達が笑って頷いた。
「では、昨日言った通り、今日はズルゾロフマーケットを重点的に見張ることとする。
 それ以外の街の各所の警護も頼んだぞ。」
ヤンの言葉に
「まかしとけ!」
隊服姿の隊員達から頼もしい返事が返ってくる。
「俺とサーシャは街に向かうが、24期は街には出ないで、いつも通り近辺の警護をしてもらう。
 今日はあまり予定通りには行動できないだろう。
 各自、ロウドフ先輩と連絡を密にとってくれ。
 事務所が今日の情報集積の場になっている。
 皆、今日も安全運転でかっ飛ばすぞ!」
隊員達を見渡しながら言うヤンに
「了解!」
全員が敬礼と共に答えた。

ガレージのシャッターが全開になり、次々とラーダカスタムが出動していくいつものミリツィアの朝が始まるが、今日はその中に薄汚れた実習車やピカピカの来客用乗用車が混じっていた。
隊員達は街を目指し、あるいは山道へと散っていく。
大捕り物が行われる緊張感に、隊員達の気持ちは高ぶっていた。

ガレージから出動していく車のエンジン音を遠くに聞きながら、コプチェフの意識が覚醒していく。
部屋の中がいつもの朝より明るいことに気が付くと
「ヤベッ!寝過ごした!」
慌てて身を起こす。
そのとたんに体中に痛みが走り、昨日のことを思い出した。
「いってー、そっか、今日は午後からの出動だったっけ。」
コプチェフが起きた気配で、ボリスの意識も覚醒する。
「おはよ、っつ、動くとまだ痛いな。」
軽く顔を歪めるボリスに、コプチェフが
「おはよ」
ソッとキスをする。
「腹減ったー、食堂ってまだやってるかな?
 今日は午後組が多いから、1日営業してくれてるといいけど。」
コプチェフがベッドから起き出して着替え始めると、ボリスも後に続いた。
「とりあえず、食堂に行ってみよう。
 それから事務所行って、連絡待ちだ。」
着替え終わった2人は部屋を後にする。
食堂で朝食をとると事務所に移動して、出動した隊員達からの情報を待つのであった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ