ウサッビチ4

□9
1ページ/6ページ

ズルゾロフを確保してミリツィアに戻ったコプチェフとボリスの顔は明るかった。
脱獄した04号囚人を確保することは出来なかったものの、イリヤが潰したがっていたズルゾロフファミリーを壊滅させることが出来たからだ。
「結果的に04号囚人に手伝ってもらう形になっちまったが…
 何はともあれ、イリヤ先輩が帰ってくる前に何らかの成果をあげられたんだ!」
笑顔を見せるコプチェフに
「だな、最悪の事態は避けられるんじゃないか?」
ボリスも安堵の表情を浮かべた。
「ありがとな、さすが別働隊!俺達の命も救われたよ。」
「お前等、同期の鑑だぜ!」
「逃げられないよう、ズルゾロフが入ってる仮監房はガッツリ見張ってるからな。」
「イリヤ先輩が帰ってきたら、俺達も活躍したって伝えといてくれ。」
「マジで、よろしく頼むぜ。」
一緒に帰還してきたカンシュコフ達が2人に話しかけてくる。
「ああ、見張りの方はよろしくな。
 つか、お前等内勤なのに、何でイリヤ先輩怖がってんだ?」
コプチェフの問いかけに、カンシュコフ達は顔を見合わた。
「色々、こき使われて…」
暗い顔を見せるカンシュコフ達に、これ以上言葉をかけられず
「わかった、ちゃんと伝えておくから安心してろ。」
コプチェフは話を打ち切って、ボリスとともに事務所へ向かう。

「ロウドフ先輩、ズルゾロフを確保してきました。
 書類作成するんで、出して貰えますか?
 さすがに、普通の犯罪者と同じ書類って訳にはいかないでしょう。
 マフィアのボスですからね。」
コプチェフの言葉にロウドフが頷いて、ファイルの中を探し始める。
「イリヤが帰ってくる前にズルゾロフだけでも確保できたのは僥倖だったな。
 俺達も冷や冷やしてたんだ。」
厳つい顔に苦笑を浮かべながら書類を差し出すロウドフに
「イリヤ先輩、どれだけここの実力者なんだ…」
コプチェフとボリスは戦慄する。
「イリヤの帰還だが、道路事情が悪くてこっちに戻れるのは日付が変わる頃らしい。
 遅い時間で悪いが、帰還したら実働部隊は合同ミーティングだとさ。
 それまでつかの間、羽伸ばしといた方が良いぞ。
 明日からまた忙しくなるだろ。」
ロウドフの言葉に
「書類作成したら、メシ食いに行ってゆっくりしますよ。」
コプチェフが苦笑と共に答えた。

事務所を後にし、2人は自室に戻っていた。
「お疲れさま、って、今日は何も活躍出来なかったけどさ。」
コプチェフがボリスにソッとキスをする。
「お前は、昨日頑張ったんだから良いんだよ。」
ボリスが優しい笑みをみせた。
「俺が書類やるから、銃の整備お願いして良いか?
 今日は全然使わなかったけど、昨日使って調整や修理が必要な銃、山ほどあるもんな。」
コプチェフが山になっている銃のケースを見ながらため息をつく。
「わかった、じゃあそっちは任せた。」
ボリスは笑って頷くと、銃のケースを手に取った。

しばらくの間、銃を整備する音、ペンを走らせる音だけが部屋に響いていた。
「よし、こんなもんかな。」
書類を書き終えたコプチェフが、伸びをしながら椅子から立ち上がる。
「あ痛、まだ動かすといてーや。」
わき腹を押さえるコプチェフに
「大丈夫か?お前、本当なら1週間くらい出動出来ない体だろ?」
ボリスが心配そうな顔を向けた。
「それは、お前も同じだし、他の奴らだって一緒だ。
 それに、こんな緊急事態に俺だけ寝てるなんてごめんだよ。」
コプチェフの顔には、いつものニヤニヤ笑いが浮かんでいた。
「とりあえず、メシ食いに行かねーか?
 せっかくだから祝杯あげてーけど、イリヤ先輩帰ってきた時に酒の匂いさせてたらどんな目にあうか分からないから我慢だ。
 合同ミーティングが怖いぜ…」
顔をしかめるコプチェフに
「酒は後にして、今日のところはこれで祝杯だな。」
ボリスが冷蔵庫からジンジャーエールを取り出して、1本を手渡した。
2人は缶を軽く触れ合わせ
「ズルゾロフ確保に、乾杯!」
そう言って、笑いながら乾いたノドに液体を流し込んだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ