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□30000hit 企画置き場
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2010年、春。
今年、八十神高校に新しく生徒が入学をする。
入学式が行われている中、立ちっぱなしで校長の長い話をダルいと思っている入学生たちの列に彼女…天城雪子はいた。
幼なじみである千枝も一緒に入学をした上にクラスも同じで楽しくやれそうだと内心嬉しかったりした。
だが雪子は、1つだけ気になることがあった。
同じクラスに、見たことがない男子がいた。否、本当に男子かはわからない人物がフードを被り教室にいたのだ。
隣町から通っているらしい見知らぬ人もいるが、雪子はとにかくその男子が気になった。
決して好意とかを持っているわけではなく、ただ気になる。
時折揺れる紅い髪が綺麗だと思った。
そんな彼の名前は、朝の出欠確認で知ることができた。
零純也。
自己紹介も適当によろしくの一言で済ませた彼は、極端に人を避けているような気がする。
雪子は気づかぬうちに龍ヶ崎純也という男を目で追っていた。
***
「はぁ…」
入学式を終えてから早くも1ヶ月が過ぎようとしていた。
雪子は変わらず無意識に純也を目で追いかけていて、千枝に何かあったのかと聞かれるくらい彼が気になっていることに気づいた。
自分は一体どうしたのだろう。
原因がわからず今までと変わらず日は過ぎていき、教室から逃げるように出てきた雪子は図書室にいた。
昼休みであるせいか、図書委員以外は誰もいない部屋の奥でため息をこぼす。
何か本でも読めば気が紛れるのかと来てみたが、まったく目に入らない。
正体不明なその感情は、雪子をじわじわと苦しめていた。
「……あ、」
ふと顔をあげたとき、一番上にある棚に料理の本を見つけた。
あれならいいかな、と手を伸ばしたが届かず背伸びをしたが背表紙に触れることすらできずフラフラする。
「もう、ちょっと…」
とれない。どうしようとそのままでいたとき、背後から手が伸びてきて料理の本に触れた。
「…どれが取りたいの?」
「えっ?」
思わず手を引っ込めて変な声を出してしまった。
恥ずかしいと思いながら取りたい本の名前を言えば、その手は軽々と本を抜き取りそれを雪子に渡した。
「はい」
「あ、ありが……っ!?」
受け取ろうとして顔を上げたとき雪子は言葉を失った。本を抜き取り渡している人物は間違いなく、自分が気になっている男で。
しかも微妙にフードがずれて顔が見えていて、わずかに見える紅い瞳に吸い込まれそうになった。
「…いらないの?」
「っ、あ、ありがとう」
「…礼を言われるようなことしてないよ」
「で、でも龍ヶ崎くんがいなかったら取れなかったし…」
「……。」
「…龍ヶ崎くんは、何を借りに来たの?」
「特に理由はない。ただ、教室にいたくなったから来ただけだ」
心臓がいつもより速く、バクバクとうるさい。もしかしたら今、自分の顔は真っ赤なんじゃないかと不安になりながら雪子は必死に純也と会話をしようと話をした。
「……、ご、ごめんね引き留めちゃって」
「いや…久々に話しがいがあって楽しかった。じゃあ、俺はこれで」
「あ、うん…」
「…よかったら、また、」
「え?」
「いや。じゃあな、天城さん」
結局何も借りずに純也は図書室をあとにした。その後ろ姿を消えるまで見続けた雪子は、顔を真っ赤にしてうつむく。
そして、気づいた。
「(わ、私…好きなのかな)」
「(…龍ヶ崎くんのこと)」
小さな恋が、ここに芽生えたそんな5月。
2人の出会いは、これから始まった。
end
ヤバいヤバいヤバい、提造だけど大丈夫でしょうか…不安です。
繭さまリクエストありがとうございました!