短編

□終わりを迎えた世界
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「足立さん」

「ん?なんだい?」

「何で俺のこと押し倒してるんだよ」

「逃げられないようにするためだよ」


金色に光る目。赤と黒の空が広がるテレビの中で、一人で座り込む足立さんを見つけたのはついさっきのことだ。
俺が近づいて、近づいたのがいけなかったんだろうけど起きているのか確認しようと手を伸ばしたら地面に組み敷かれて。
油断したが、この状況がよくわからない。殺したいならさっさと殺せばいいのに。


「死んだ目だな」

「そりゃあね」

「誰のせい?」

「あんたのせいだよ」


人のことを嘲笑う表情に、前までなら浮かんできたであろう怒りがまったく沸いてこない。
足立さんが真犯人だった。それは真実。だけど俺たちは勝てなかった。負けて、一緒にいた仲間はいなくなった。殺された。
俺もまた、現実世界に戻れずずっとテレビの中をさ迷う。戻ろうとしても、今まで通れたはずのテレビに手が入らない。

救えなかったからか、閉じ込められてずーっとこのまま。どうして俺だけこうなっているのか、訳がわからない。


「帰せよ」

「嫌だね」

「返せ」

「それは聞けないお願いだよ」

「……くそが」


なんとでも言えば、と言って足立さんは持っていた拳銃を心臓に突き付けてきた。引き金を引かれれば今すぐにでも死ねるだろう。不思議と恐怖はなかった。


「瀬多くんたちがいなくなって、寂しい?」

「寂しいな」

「お姉さんに会えなくてつらい?」

「つらいな」

「なにか言いたいことはある?」

「……死ね、くそが」

「あっそ」


撃たれるかと思った。つまらなさそうに引き金を引くのをやめた足立さんは、何を思ったのかいきなり銃を持ったまま腹を殴ってきた。いきなりのことで咳き込み、うずくまろうとしても足立さんが足を押さえ腕を拘束しているから動くことすらできない。

マジで、くそだ。


「有里くん…だっけ?彼に助けを求めれば?」

「……なんでそこで湊さんが出てくるのか理解できないな」

「だって彼氏なんでしょ?君にとってのヒーローなんでしょ?」

「………」

「ヒーローが助けに来ないのはおかしいでしょー。あ、もしかして見捨てられたとか?だとしたら最高だなぁ、君の歪んだ泣き顔がみられそうで」

「はっ、誰がてめえなんかにそんな顔見せるか。気持ち悪い」

「可愛くねえガキ」


足立さんの顔が遠ざかっていく。ようやく離してくれるのか、と思えば腹に圧迫感。そして走る激痛に息が詰まりそうになる。
腹を容赦なく踏みつけ、呻く俺を見て楽しそうに笑うこいつはもう壊れ狂っている。


「あ、がっ、」

「いい顔だね。さっきより生きた顔をしてるよ?」

「うる、せっ…!」

「ほら、人間らしい」

「っ、!」


横腹を蹴られ、腹を踏まれ、顔を殴られ。やりたい放題に人の体をなぶったあとに顔を近づけてきてまた笑った。


「一生だしてやんないよ、バーカ」

「……」

「はっ、ははは、」


狂ってる。








end
足立さん誕生日で書いたけどやっぱ狂わせてまう。いや、足立さん書いたの初なんですけどね!?
誕生日おめでとうさん!

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