短編その2

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「今、何て言ったの?」

「ですから、純也さまが体調が悪いと言うので薬を渡したのですが、間違えて媚薬を渡してしまいました…と申しました」


盛大に、元の見た目がわからないほど改造された保健室にある椅子にどっかりと座ったままそう言ったエリザベスは困った風でもなく、むしろ楽しそうに話してきた。


「何で間違え…いや、いい。純也はどこに?」

「さて。薬はこちらで飲んでいきましたが即効性ではないので、今頃どこかの空き教室にいるのではないでしょうか? 薬の効き目はもう出ていますから、かーなーり。元気になっているかと存じます」

「…そう」

「ああ、ついでと言ってはなんですがこちらをどうぞ。お役に立つかと」

「…………ありがとう…?」


クスクスと意味深に笑うエリザベスに背を向け、保健室をあとにする。純也のことだからきっと一人で延々耐えてるんだろう。出し物をやっていない無人の教室を見つけて中を覗くが、人の気配はない。トイレも見てみたが、いない。


「ジュンクンならついさっきここを通ったクマよ?」

「…どこ?」

「あっちに行ったクマ。何だか顔色悪くて声かけたけど、大丈夫って言って行っちゃったクマ。クマも着いてっていい?」

「いや、悪いけどそっとしておいてもらえる? 僕が行くから」

「むー…ハンチョーがそう言うならわかったクマ。ジュンクンのこと頼んだクマよ!」

「うん」


クマが指差した方に歩く。
一番端にある、文化祭のときには人気が一切無くなる部屋…図書室だ。前の扉を開けようとしたら鍵がかかっていて、後ろはどうかと確認すると…。


「うわ…」


鍵が壊されていた。ペルソナの力を使ったのか、かなり酷い。普段の彼なら有り得ないだろう行為だ。多分、というか絶対にここにいる。
ドアを開けて中に入る。足を踏み込むと、ガチャンとなにかを蹴った。ドアの鍵…だったものだと思う。床に落ちた破片を中に入れたのか。遠くから見たときに、分からないように。バレないように、壊した鍵を中に。

音を立てないように扉を閉める。奥に向かうことをせずに、耳を済ませた。


「っ……」


聞こえた。小さな声。必死に声を殺して、見つからないようにしている。歩き出すと、足音がやけに大きく聞こえた。近くまでいかないと見つけられない、完全な死角。

そこを覗き込むと、膝を抱えて小さくなり息を必死に殺す純也がいた。赤い髪に負けないくらい、赤くなった耳にそっと触れる。


「っ…!?」


バシッと手を叩かれる。想定内の反応だったので狼狽えることもなく、僕の姿を見た純也は一瞬だけ安心したような顔をして、すぐに僕を睨み付けた。息は途切れて顔は赤くて。目には涙が浮かんでいて、叩いた手は我慢をするために引っ掻いたのか、赤くなっていた。


「何のよう」

「…エリザベスから話聞いたよ」

「…やっぱり、薬、わざ、と」

「みたい」

「あの女ッ…」


エリザベスがわざと違う薬を渡したことを勘づいていたようで、歯軋りをする。原因が判明したとはいえ、純也の体の火照りが冷めるわけでもない。


「純也」

「……?」

「つらくない?」

「…大、丈夫」

「嘘はダメ。もう、こんなんじゃ苦しくて」

「ッ、」

「さわってほしくてしょうがないはずだよ」

「っ…ふ、ぅ…」


頬を撫でるだけで、欲情に満ちた体は跳ね上がる。

硬くなっているソレに手を添えれば体がピクリと反応し、ベルトを抜き取りバックルを外して出来た隙間に手を入れて上下にさすってやればじわりと冷たい感触。


「……いった?」

「っ…ゃ…」

「こんな状態じゃ迷宮もろくに行けないし、早めにどうにかしたほうがいいと思うけど」

「………ず、るっ、ぃ…」

「本当のこと言っただけだよ。…ねぇ」

「ぁ、あ…」

「純也」


弱々しく首を振って拒絶をする。ここが学校で、いつ誰が来るかわからない場所だからきっと理性がダメだと言っているんだろう。

だけどこのまま堪えて、効果が消えるとは思えなかった。あのエリザベスが渡した媚薬だし。


「ね。イイコト、しよ?」

「っく…ぅ〜…や、だぁ…!」


意地でも頷こうとしない彼の口をふさぐ。顔を背けて逃げようとするのを手で遮り、ズボンに入れたままの手を再び動かす。


「っ―――ぅっ、んぅ…!」


薬のせいでろくな抵抗も出来ないようで、呼吸をさせるために離れても逃げるような素振りは見せなかった。ズボンから手を抜いて、制服の中に手を突っ込んで手探りで胸の飾りを見つけ、摘まむ。


「ぁ…!」

「……じゃあ、このまま一人で耐える? それとも迷宮に行く?」

「ッ…」

「純也」

「っ…い、て」

「なに?」

「抱い、て…」

「……うん。いいよ」


やっと、観念した。零れる涙を拭ってあげると子どもみたいにぐずついてしまって、晒された喉元に噛みつけば息を飲んだ。

学ランを脱がして床に敷き、すでに抵抗する力がない体をその上に押し倒した。シャツのボタンを外していくその様子を、彼は息を荒くしてただ見つめていた。
すべて外して、中に着ているタンクトップを上にずり上げる。空気に晒されたそれは、赤く膨れ上がっていた。


「もう、こんなになってる」

「ッ…あ、ん、ぅ…!」

「…かわいい」

「……る、さ…ッ、」


滑らせるように胸の飾りに触れると、大きく体が跳ね上がる。媚薬のせいで乱れた彼の体はとても正直で触れられるたび熱を帯びていく。

声が上がるたび恥ずかしそうに顔をそらし嬌声を塞ごうとする手を捕まえて指を絡め、床に押し付ける。そのまま濡れた唇に噛みつけば気持ち良さそうに目を閉じて快感に震えた。

離れて、視線が交わる。涙で潤む瞳が愛しくて堪らなかった。今の純也には僕のどんな姿が見えているんだろう。

空気にさらされたまま放置していた胸に噛みつく。

指先で首筋をなぞってやるだけで快楽に浸り、焦点の定まらない目には僕の姿だけが映し出されていて。自分の中の雄が暴れる。こんな姿、みんなには見せられない。きっと軽蔑される。だけど純也はそんな僕を求めた。もっと、と受け入れた。


「み、な…ッ、んっ…ひ、」


ズボンとパンツを一気に引き抜き、吐き出された欲を指に絡ませて物欲しそうに疼いているそこにまずは一本、ゆっくりと埋めていく。


「や、あ…入って、」

「…ココだよね」

「っあ、あ"!? や、だぁ…!」


僕の知っている彼と変わらず、弱いところを何度も引っ掻くと堪らないといった表情で喘ぐ。


「―――ッ、…あ"っ…っッ、」

「っは…かわい…」

「も、お…いれてっ…!」

「…いいよ」


必死に手を伸ばして求めてくる彼の姿に狂おしいほどの愛しさが込み上げてくる。僕だけを求めて、僕のために喘いで。
エリザベスが去り際に渡してきた、役に立つ物……コンドームが入った袋を破る。なんで保健室にコンドームがあるのか、なんでエリザベスがこれを知っているのかは気にしないことにしよう。

自分のにはめて、何度も収縮を繰り返すソコへあてがいナカヘ侵入した。


「っあ"…あ、あっ、はい…て…」

「ん…キツ…」

「っふ…は、ぁ…」


ゆっくり、たっぷりと時間をかけて自分のものを挿入していく。全部入ると純也の中はとんでもないくらい狭くて、持っていかれそうな程に締め付けられてイきそうになるのをなんとか堪えた。


「…純也」

「う、ぁ…ふぁ…」

「スゴい締め付け…持っていく気?」

「だ、って…ぜんぶ、ほし…」

「……!」

「みなとさんの、ぜんぶ、ほしいから…っぁ…!」

「…まったく、本当にっ…!」

「っや、うごいちゃ…はぁ、あッ」


ガツ、と奥をえぐるように律動を始める。媚薬のせいで敏感になった体は一度律動をしただけでびくりと跳ね上がり欲を放つ。


「あ"っ、あぁ!!」

「っん…!」


鋭い痛みが肩に走る。汗で滑る手に、何をされたのかすぐに理解をして笑みがこぼれた。


「……ど、したの…?」

「…ふふ、なんでもないよ」


肩に傷つけられた、純也の爪痕。
彼の証がこの体に刻まれたと思ったら、ゾクゾクした。
貪るようにキスをする。舌が絡む卑猥な音が部屋に響いてそれが熱を上昇させて、透明な糸を引く。


「湊さ…も、っと…!」

「うん、わかってる」


まだ媚薬の効果が切れず欲張る純也のソレを掴み、上下に擦る。跳ねあがった腰を押さえて、ひくひくと痙攣する内腿を撫でる。


「ッッ〜〜〜!」

「気持ちいい?」

「は、ひっ…」

「…この穴は、調教されてる?」

「ッ、ふっ…だ、め…」

「そういう玩具もあるらしいけど」

「や…!」

「……まだ、みたいだね」

「〜〜〜ッ、ん、ぁ、っ、ッッ…!」


そんな自分の欲望を話しながら、擦る手は動かし続けた。調教してみたい。されていない尿道と呼ばれるそこの小さな穴を抉るように指先で引っ掻くとカタカタと震えて必死に声を堪えた。どぷりと少量の欲が吐き出されて、イったのだと分かる。


「は…スゴい、全然足りない」

「湊ッ…」

「もっと見せて。その理性が飛ぶほど、ヨくしてあげるから」

「あ、つい…!」

「うん」

「へん、だよ体が…」

「…全部、薬のせいだから。変になればいい」

「んっう…は、ふ…!」

「ほら」

「あッ、あっ、う、ぁ…ん!」


前立腺を何度も擦ってやると、ポロポロと涙を流して喘ぐ。奥を、入り口を、弱いところを全部突いてあげると壊れたように泣き叫んだ。


「や、だぁ、ぁ…ッ…! いっ、ふぁ、や…壊れちゃ…ダメ、おかしくなるっ…!」

「純也ッ…!」

「あっ、ぅあ…ん、ひぅ…!」


何度も何度もイって、それでも薬の効果が消える様子もなく流石に疑問に思い始めた。
ただの媚薬なら、ここまで来たら体の火照りが治まってもおかしくない。なのに純也の体は逆に熱くなるばかりで、むしろ僕の体まで火照ってきたような。


「ッあ…の女は…!」

「え?」

「っは…ふ、絶対、薬の効果、いじってるっ…ぅ、あ」

「…まさか改造したってこと?」

「っあう…だって、イくたび、体があつくてッ…は、っあ…」

「苦しい?」

「ふっ…ひぁ、くる、し…」


体の熱が下がらないのも、性欲が治まらないのも全部エリザベスが媚薬をさらに改良してしまったかららしい。
でも、ここまでひどいものを飲まされていながらまだ理性がギリギリ残っているなんて大した精神力だ。

震える手がピクピクと痙攣する自分のモノに触れる。ずっと止まっていたからか、中途半端な快感に限界が来たらしい。

ほんと、かわいい。いつもなら遠慮がちに動かす手も、媚薬のおかげで恥じらうことなく上下させたり穴をいじったり。それでも、奥を突かれる刺激には及ばない。


「…我慢できない?」

「できないッ…奥、おくが、かゆくて…!」

「ふふ…堪んないね」

「ふ、ひ…や、あ、あっう、」


ちょっと動いただけでも小刻みに喘ぐ。
吸い込まれるようにだらしなく開けっぱなしの口に噛みつき、舌を絡ませ何度も吸う。

声も、息も。全部食べてあげる。


「ッ〜〜!」


塞いだまま律動を再開すると、突如与えられた刺激に全身を震わせた。酸素が足りないなか、弱いところを何度も責めると苦しさに涙をこぼす。

解放してあげた頃には酸欠で、喘ぎながら必死に酸素を取り込んだ。


「っは…、」

「純也」

「ぁ…ん、っ?」

「好きだ」

「ッ、………おれ、もっ…」

「俺も? ね、聞かせて」

「っ、ん…好き、だいすき、湊…!」

「ッ――」


本気で、抱き殺してやろうかと思ってしまう。このまま誰もいないところに閉じ込めて、ずっと二人でいたいと心の闇に隠れた自分の醜いものが出てきそうになる。

もっともっと、欲しい。純也が。


「っん、ぅ…好き、みなと、湊ッ…」

「ッ…あー、君って本当、」

「ん、あ、あっ、おく、ダメ、」

「僕を殺す気?」


あまりの愛らしさに、気が狂いそうだよ。

コツコツと奥を突いて、食い尽くすように動けば絶頂が迫ってくる。ギチ、と背中に回された手が肉の食い込むのを感じて痛みに呻きながら、鎖骨に噛みついた。


「あ…っあ、イく、出、る…!」

「んっ…は、いいよ」

「あ、っあ…やっ、ッッ〜〜!」


勢いなく精液がお腹に垂れる。
強い締め付けに僕も促されて、ゴムに欲を吐き出した。


「っうあ…あ…」

「は…はぁ…」


エリザベスの薬の効果はまだ無くならない。まだまだ萎える様子もない純也のモノは反り返っていて、ナカは離さないと言わんばかりに締め付けてくる。

だけど精神的な疲れは襲ってくる。ぐったりと力が抜けてしまって、荒い呼吸を繰り返し起き上がる力すらない純也の体を引き、自分の上に座らせる。より深く繋がって小さく小刻みに喘いだ。


「や、ぁ、あっ…!」

「んっ…ほんと、厄介な薬…」

「ッ、あぅ…やっ、あ"」

「純也ッ…」

「ひく、ぅ、みな、と…ッ、」


暑い。熱い。触れるところすべてが、熱くてたまらない。


「湊、みなとっ…」

「ん…なに?」

「キス、して」


切にお願いされて、断る理由もない。
濡れた唇に噛みつき、酸素を奪う。


「ん、ふっ…」


目を閉じて快楽を感受するその姿にまた興奮する。

ああ、このまま本当に二人だけの世界に行けたらいいのに。

そしたら純也は、一緒に来てくれるだろうか。

きっと来てくれる。そうであることを信じて、この欲望をそっと心の奥底へとしまいこんだ。





20180711

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