PQ

□愛の数だけ抱き締めて
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今のこの状況が幸せで、いつかバチが当たるんじゃないかって思う。
うつらうつらと夢の世界へと落ちそうな今、枕元では湊さんが目を細めて頭を撫でている。

起きたいのに体は重く、まるでベッドに縛り付けられているように思えた。撫でている手は殴られてできた傷に触れ、軽い痛みが走り顔が歪む。

ごめん。と謝る声が聞こえた。なんとか手だけを動かし、湊さんへと手を伸ばす。手は握られ、甲にキスを落とされた。いつもは恥ずかしいそれも、今は嬉しくて。

そういえば、湊さんが制服を着ている。それに気づき同時に今見ているものもすべて夢なのかと思った。だとしたら、何て虚しいものなのか。

泣いているの?湊さんは身を乗り出し、空いている手で流れた涙を拭った。

もう二度と会えない人なのに。夢でも見るなんて、どれだけこの人のことを想っているのだろう。それはもう、自分でも言い表せないくらい大きい。

夢ならば。せめて、夢の中だけでも甘えさせてほしい。こんなに弱い俺を、許してください。

俺を、置いていかないで―――。






*****






随分と寝たらしい。夢はいつのまにか終わっていて、意識は現実へと戻された。ずっと夢を見ていても良かったのに。

目を開けると司会に入ってきたのは保健室の天井だった。大嫌いな病院と酷使した保健室の天井はあまり好きじゃない。


「おはよう」


すぐ真横から聞こえてきた声に体が強ばる。
ついさっきまで夢の中で聞いた声で、恐る恐る横を向いた。自分の手があって、その手には別の誰かの手が握られている。

その人は俺が寝ているベッドに一緒にいて、うつ伏せになり、少し眠そうな顔をして俺を見ていた。


「っ…有里、先輩…?」

「うん」

「なんで、ここに」

「……覚えてない?」

「……あ、そうか、…そうか…」


記憶までバカになりそうだ。今の状況を理解し、目元に手を当てた。異世界に迷い込み出会ったペルソナ使いたち。それが、湊さんたちで。
夢なんかじゃなかった。湊さんはちゃんとそこにいた。ということはあれは夢ではなく、本当のこと。


「泣いていたけど、どうしたの?」

「……夢かと思って」

「ん?」

「湊さんが、ここにいることが夢かと」

「……あぁ。そっか。大丈夫。僕はここにいるから」

「………。」


保健室のベッドに二人で寝るのは少し狭く、身動ぎをしただけで密着する。なんでこんな状況になっているのかは分からないが、冷静に考えてみるとどうしようもなく恥ずかしい状況にあって、顔が熱くなっていくのがよくわかった。


「真っ赤」

「う、るさい」

「照れ屋なとこは全く変わってないね。というか、見た目以外なにも変わっていないね」

「俺だって、変われる」

「知ってる」


顔を手で隠すがもう意味もなにもない。
握られている手の力を籠めれば同じように力が強くなった。ここまで安心できるものなのか。


「眠い。寝よ」

「え、寝るってここで…?」

「純也も」

「俺も? 待て、こんなの見られたら絶対にからかわれるって、」

「見せつける」

「エリザベスに見つかったらめんどくさいって!」

「どうでもいい…」

「よくねえ!」

「おやすみー…」

「俺は抱き枕じゃないって、マジで寝ないでください先輩!」

「んー…」


必死に叫ぶのもむなしく、湊さんは夢の中へと旅立っていく。手は握られ腹に手を置かれ動けなくなり、見つかったらもうどうにでもなれとやけくそにやって眠ることにした。

出来ることなら夢は見ないでぐっすり眠りたい。湊さんが出てくるなら見てもいいかな。






end
(おや。これは幸せそうに熟睡していらっしゃいますね)
(レア物)
(瀬多さま、よろしければその写メ私めにも分けてくださいませ)
(もちろんだ)

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