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《純也先輩敵を撃破!戦闘終了だよ、おつかれさま!》


久慈川さんのナビで戦闘終了が伝えられ、肩の力を抜く。最後にシャドウを倒した彼は刃についたシャドウの黒い液体を払うように鎌を振り、地面に着いた。身長よりも大きい鎌は当然重さもありがしゃんと音を立てる。

ふと、頬に血が流れているのを見つけた。さっきの戦いでついたのか新しくだらだらと流れ落ちていて制服に染みてしまいそうだった。だけど、治そうと思っても僕が装備しているサブペルソナには回復の技がない。あるとしたら、補助系のものだけ。彼を癒す術が無い。……道具は、リーダーの鞄の中だ。


「純也、怪我してる」

「…ん、本当だ」

「ディア」

「傷薬でいいんだけど」

「何?」

「ナンデモナイッス」


気付いたら総司が傷の手当てをしていて、傷薬でいいと答える彼の腕を強く握りしめれば彼は大人しく治療を受けた。淡い光に包まれると傷は綺麗に無くなる。


「サンキュ」

「あまり無理するなよ」

「大丈夫だ。そこまで心配しなくても」

「お前の大丈夫は信用ならないから言ってるんだけどなぁ…?」

「ちょ、待ってマジ無理しないから腕折れるっ」

「瀬多くんそんくらいにしてあげたら?もう進むよ?」

「分かった」


骨の軋む音が聞こえていたから、本気で力を入れていたんだろう。里中さんに言われて腕を解放しまた進み出す。
ようやく痛みが消え、彼は総司を睨み付けたがすぐに無表情に戻った。


「純也、ここって何があったっけ」

「パワスポ」

「ありがとう、助かる」


純也だという彼が会話に入っていると、ぎこちない雰囲気が漂うのは事実だ。総司たちと話したり仲間と話したりするときは平気なのに。
それを察してなのか、彼は自分から会話の中に混じってくることは滅多に無かった。誘われないと、入ってこない。空気を読みすぎて、逆に一人になってしまっている。

どうにかしようと思っても、なんて声をかければいいのか分からないんだ。



「FOEがいるよ!みんな注意して!」


「うおっ!?」


天城さんの声で我に返る。見れば遠くに天使のような、変なキューピットのような姿をしたFOEがいた。
一歩反応が遅れた順平がマスに入ってしまう。そんな順平目掛けて矢が放たれ、このままではまずいと体が動いた。だけど、間に合わない。


「先輩」

「どわぁ!?」


当たったか、と思ったけれど矢は順平に命中しなかった。何故なら、彼が仏頂面で右手に矢を持ち左手で順平の制服の襟を掴んでいたから。


「す、すご…あんたそんなこともできるんだっけ…」

「動体視力ぱないっすね先輩!」

「嬉しくない」

「順平、大丈夫か!」

「全然大丈夫っす…はは」


九死に一生を得た、といった表情を見せる順平は渇いた笑みをこぼした。彼が咄嗟に順平の襟を掴んで引っ張り矢を掴んでいなかったら当たっていたかもしれないから当然と言えば当然かもしれない。だけど、放たれてる矢を掴むって普通の人ができることじゃない。


「あー、その、サンキュー…な」

「いえ」


ばき、と矢を折るとそれを投げ捨てる。
FOEを見ればすでに違う方向を向いていて、僕たちが進む前の道は安全になっていた。


「ちょっと順平、気を付けなさいよね」

「いやー、面目ない」

「にしても、動いてる矢を掴むって人間技じゃねえよ…」

「スゴいよね…流石に驚いた」

「ワンッ」


人間技じゃない技量に驚かされ話をする順平やゆかりたち。コロマルも一声上げ、また前に進んだ。


「気にすんなよ」

「……わかってる」


目の前で交わされていた会話の意味も、理解しないまま探索は進んでいく。





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