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「もうお腹一杯だからいらね」

「たこ焼き一個しか食ってねえじゃん!」

「結構頑張りました」

「これで!? いつも学校で食ってた弁当はもう少し行けたのに!?」

「俺の胃袋一般男子の半分以下なんだよ。多分」

「多分!? ふざけてんのかお前はっ! だからぶっ倒れんだよ!」

「いや、あれは寝不足とか重なってね?」

「ね? じゃねえよ言い訳すんなこのアホ!」


フードコートに陽介の声が響き渡る。

目の前に差し出された一個だけ食べてあるたこ焼きに怒る陽介。誤魔化すように陽介から目を逸らす、頬に湿布を貼った純也。同じ席を囲む陽介と同じ八高の二年生メンバーは苦笑するしかなかった。

陽介がつい怒っている理由は簡単だった。純也がたこ焼きを買ったのはよかったのだが、一個だけ食べてギブアップしてしまったのだ。もう無理、とたこ焼きを自分から離した純也に過去に倒れたことがあるんだからちゃんと食べろと言ったのだが、無理だと首を横に振るばかりだ。


「いらない」

「また倒れる気かお前は…」

「入らないものは入らない。これ以上食べたら…吐くぞ」

「真顔で言うな! たこ焼き一個で吐く奴がどこにいんだよ!」

「お前の目の前にいる」

「知るか! つーかお前、今まで食べた飯の中で量が一番多かったのなんだよ」

「オムライス。姉さんが作ったやつ」

「美味しかったのか?」

「とんでもなかった」

「そうか…」

「なぜそこであたしと雪子を見る」

「…いや」


ガツガツとドーナツを頬張る千枝の睨みに総司はそっと目をそらした。彼らは忘れていない。あの林間学校の時に食べたカレーを。夏の日に食べたオムライスを。


「純也くん、話変わるんだけどその頬どうしたの? ゆかりちゃんに叩かれた?」

「里中にスパンと」

「千枝? ダメじゃない千枝。お肉食べられないからって平手打ちしちゃ」

「待って。ちょっと待ってあたし肉食べられないからって平手打ちするほどひどい人間じゃないよ? ねぇ」

「あながち間違っちゃいない…」

「シバくよ」

「お肉の恨み?」

「違うから! 雪子が勝手に言ったんでしょそれ!?」


バン!と勢い良く机を叩き抗議をした千枝に笑い始める雪子。雪子は笑いのツボに入ってしまうとしばらくは戻ってこないので落ち着くまで放っておくことにした一同はいつものようにまた会話を始める。陽介は渋々と言った様子でたこ焼きを食べ始め、それを千枝と総司が横からつまみ一つずつ持っていった。


「しっかし、たこ焼き一個で限界ってなるとあんた何をまともに食べられるわけ?」

「百歩譲ってアイス」

「まさかのアイス」

「あとは…無理そうだね。 お好み焼きもドーナツも重いし」

「雪子いつの間に戻ってきたの…いつもより早いし」

「あ。荒垣さんの手料理は?」

「あー…それなら全部いける」

「荒垣さんの手料理か…あれからな湊たちと進展はあったのか?」

「いえ全く。話すらしてない」


はは、と乾いた笑みをこぼす純也の目は据わっていてどれだけ心境が辛いものなのか理解をした陽介たちはなにも言えずに苦笑いをするしかない。どうやら純也と月高の間にはいまだに深い溝があり、どうすればいいのか彼本人も悩んでいるようだった。


「お前から話しかけたらどうなんだ?」

「それができれば苦労しない」

「ですよね」

「…あ。はがくれのラーメンなら完食できる!」

「ここにはがくれのラーメンはありません!」

「はがくれ丼食べたい…」

「ここから戻ったとしても辰巳ポートアイランドに行くのは難しいぞ」

「修学旅行の時もっと食べとけばよかった…」

「んな小さい胃袋のどこに入るんだよ」

「うるさい。次の番人で死ぬかもしれないだろ。後悔はもうしたくないからな」

「そこで物騒なこと言っちゃいます!? 冗談で言い切れないからやめろ!」


純也の言う番人は、現在探索をしているごーこんきっさの番人のことだ。妙な質問を繰り返され、リーダーである総司がすべて答えてきたがもうすぐ終わりが見えてきているようで、終わりと言うことは総司の運命の相手が分かるということだった。

同時に、終わりには不思議の国のアナタにいたハートの女王のような宝を守る番人が存在している。存在しているからには、倒さなくてはいけない。


「運命の相手、誰になるんだろうね?」

「ちょっと気になるかも」

「巽とか」

「「それはない」」

「番人がどういうのなのか、気になるな」

「…ごーこんきっさの番人」

「主催者?」

「まともじゃない予感しかしないな」

「うーん」

「…乾はやめろよ?」

「お前は俺をなんだと思ってるんだ…」

「ぷ、ふっ、くくっ…」



八高二年生は本日も元気に仲良くやってます。




end

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