赤の似合う君と

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『神乃木さん、あの、私が一人前になるまで待っててもらえませんかっ?』

「…ああ、待ってるぜ?コネコちゃん」



〈紅の似合う君と〉



そんなやり取りをしたのは数年前。
司法試験に合格して検事になった私の前に現れたコーヒーの似合う男。
全く変わっていなかった。
ただ、彼の横に女性がいただけで…



『お久しぶりです、神乃木さん』

「ああ、久しぶりだな。まさか検事になるとはおもわなかったぜ」

「初めまして、綾里千尋です」

『初めまして、羽影雨月です。今日の弁護はあなたですよね?』

「はい」

『初っ端が死刑囚なんて…代わってあげないんですか…』

「まあな」



彼は一人前の弁護士になって、後輩である新米弁護士の綾里千尋さんを連れていた。


「今日は羽影、アンタが検事をするんだろ?」

『違います。私は、神乃木さんが弁護すると聞いていたから来ただけです』

「クッ、俺に会いに来てくれたのかい?」

『…ええ、貴方が弁護するのなら、一人前になったところをお見せしたかったので』

「…」

『さあ、始まりますよ、裁判。綾里さん、頑張って下さいね』


一目でわかってしまったのが悲しい。はいっ、と初々しく緊張した彼女を見て確信してしまった。

彼は、私を待っていてはくれなかったのだ。
ただの口約束だから仕方ないのかもしれない。
ずっと焦がれていたからわかる、神乃木さんは…
綾里さんが好きなんだと。
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