赤の似合う君と
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検事室に帰ってしばらくすると御剣君がきた。
今日の敗訴が応えているみたいで、眉間のシワとか雰囲気とか。いろいろ凄い事になってる。
「羽影検事、私は何故今日負けたのだ…」
『負けたんじゃなくて真実に辿り着いただけよ』
「しかし結果的には…」
彼は、被告人を有罪にすることを自分の意義としている。
それは、私としては間違いだと思っている。
『君が負けたおかげで冤罪が出なくて済んだんだよ?冤罪が発覚した時のほうが君の名に傷がつくでしょ?』
「…っ」
辛そうな顔をする彼が、ひどく弱く見えて。助けたいと思った。
『負けたくなかったら最初から真犯人を告訴するしかないんだよ、なかなか難しいことだけどね』
とん、と背中を叩いて座るように促す。
彼好みの紅茶を煎れて、たわいのない話をする。
御剣君の眉間のヒビがなくなるとほっとする。
この淡い感情の名を知っている。
私は神乃木さんにとてつもなく大きな後ろめたさを抱えながら、年下の彼に恋心を抱いているのだ。
部屋を去る御剣君を見送って、心に広がる虚無感。
『参ったな…』
ぽつりと吐き出された言葉はそのまま床に落ちた。