赤の似合う君と

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12月25日


「羽影検事!御剣検事が、御剣検事がっ!!」

『その件は…聞いてるよ、糸鋸刑事』

「羽影検事!頼みがあるっス!!この事件の裁判の検事をあなたに…」

『その件は狩魔検事に任せた』

「な、なんでっスカ!?御剣検事なら絶対無罪っス、しかし、このままでは有罪になってしまうっス!」

『解ってるよ』


不思議なことに、こんなに落ち着いていられるとは思わなかった。


「なら、どうして…」

『私は違う方向から彼を助けなければならない。もし私が裁判に立ったら…』


"真実が眠ってしまうかもしれないからね…"

飲みかけの紅茶を一気に啜って、口紅を差す。


「羽影検事…」

『弁護はどうせ彼に頼むんだろ?なら大丈夫だよ』


妙な胸騒ぎがする。早く、沢山の情報がいる。何か。何か裏がある気がしてならない。

糸鋸刑事の話だと、怜侍は成歩堂君の弁護を断ったとか。


『成歩堂君』

「あなたは!!」

「なるほど君、知り合いなの?」

『久しぶりだね、真宵ちゃん…』


留置所を出かけた成歩堂君を呼び止める。


『頼みがあるの…御剣君を…助けてほしい』

「…言われなくても、そのつもりですよ」

『うん、そう言ってくれると思ってた』

「検事は雨月さんがやるんですか!?」

『いや…もっと手強い人だよ。でも、私も力になる、困ったらおいで』


ヒラヒラと手を振って再び留置所へと戻る。
そして、慌てる看守を捩じ伏せ、留置所のガラスを隔たない方。彼と同じ部屋に入る。


「!羽影検事…」

『大変な事になったね、御剣君』

「こんな姿…貴女には見られたくなかった…っ」


目を伏せて顔を背けた彼。痛々しさがひしひしと伝わってくる。


『今回の裁判の担当検事の事なんだけどね』

「まさか…」

『いや、私じゃない。狩魔だ』

「狩魔検事…」

『私は私に出来る事を最大限にやる。だから御剣君も諦めないで』

「すまない…雨月……ぁ」


しまった。という顔をしている。
下の名前で呼ぶことの意味を悟ったのだろう。素知らぬふりをしてくれていた看守も目を丸くしていた。
私は気にしないけど。


『怜侍…』


クッと、彼の顎を持ち上げる。彼が座ってるからこそできる。
ゆっくり顔を近づけていくと、ひどく狼狽する彼。




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