赤の似合う君と

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12月31日


『いらっしゃい、寒かったでしょ?上がって』


"正月は一緒に過ごそう"

その約束通り、私は雨月のマンションに来ていた。
最も、一緒に年を越したいと言われたので、大晦日の今日伺ったのだが。


『少ないけど、おせち作ったから食べよ?』


彼女の部屋はシンプルで、テーブルの上にはやや小さめな重箱や、ご飯などが並んでいた。


『沢山作っても余っちゃうから』


伊達巻き、田作り、昆布や蓮根の煮物、かまぼこ、鰤の入った重箱。
澄まし汁に、茶碗蒸し。


「…全て作ったのか?」

『かまぼこ以外は手作りだよー』

「見事なものだ」


食べてからにしてよ。と、はにかむ彼女はとても嬉しそうだった。


『…どう?』

「美味しい、見た目通りにな」

『よかった』


さっきより更に嬉しそうに微笑む彼女に、こちらまで綻んでしまう。


『今年はいろいろ大変だったけど、無事終わりそうだね』

「…そうだな」


本当に沢山あった。私も彼女も。
成歩堂と再会したり、裁判にかけられたり。

一番は雨月と近くなった事。


『お疲れ様でした』

「本当に、その…、ありがとう」

『どう致しまして』


柔らかく微笑む彼女に、肩の荷が軽くなったのを骨身に感じる。






「…雨月、実家に帰ったりしなくてよかったのか…?」


食事を終え、片付けをする彼女をソファーから眺めながら口にした疑問。
年の暮れ、家族の元に帰る者だって多いのだ。


『私、実家ないから』

「え…」

『私だけ、怜侍の事知ってるのも不公平だよね』


ポスッ、と私の横へ座った雨月。テーブルの上には暖かい紅茶が並ぶ。


『私もね、15年前の冬に家族を失ったの。両親も、弟も…住み慣れた家も』

「な…」

『私は11歳、弟は9歳だった』


彼女は、ぼんやりと回想するように語り始めた。
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