赤の似合う君と
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※ヒロイン視点
御剣君が。消えた。
「あいつ、羽影さんにも話してなかったんですか…」
『うん、何も聞いてない…けど』
「けど?」
『なるほど君が考えているような理由でいなくなったんじゃないと思う』
法廷から、判決から逃げたんじゃない。
『きっと、自分の進む道を探しにいったんだと思う』
「……何も言わずにですか」
『…止められたくなかったんだよ、そして、切羽詰まってたんじゃないかな』
「だって、」
『なるほど君』
「…!」
『それ以上言わないで』
自分の思いに反して、涙が溢れる。
解ってる、解ってるんだ。
それ程彼が切羽詰まっている時、なるほど君は相談できる親友ではなかった。きっと、プライドが許さなかったんだろう。
それ程彼が苦しんでいる時、私は…頼れる先輩でもなければ救える恋人でもなかったのだ。
零れていく涙をそのままにしていれば、なるほど君がハンカチを差出してくれた。
「羽影さん…」
『御剣君には、私が泣いたこと内緒ね?』
「…解りました」
弱い先輩だなんて、おもわれたくないもの。
『それに、御剣君絶対に帰ってきてくれるよ。いつか、植物園にいく約束したから』
「…貴女は、強いですね」
『……強いんじゃないよ、そう思ってないとくじけそうなだけ…』
病院のベッドの横で小さく呟く。
『貴方が起きるまで私を支えてくれるって言ったのに…』
白くなってしまった、憧れの人の髪を撫でる。
『皆して私を待たせて置いていってしまうのね』
『やっぱり、私だって苦しいよ……』
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