赤の似合う君と
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『お帰りなさい』
彼女が私を見て最初に放った言葉。この一言で私はすべてを悟った。
彼女は、私の帰りを信じ待っていてくれたのだ。…何も言わずに消えた私を。
「…っ、ただいま」
声が詰まった。それは、私にあった後ろめたさがもたらしたものだった。
私は自分の答えを見つけて戻ってきた。それを、彼女も望んでいる。でも…その結果は彼女を待たせた。
『そっか。君は答えを見つけたんだね』
「今回は、御剣の協力なしで二人を救うことはできなかった…」
『そういうことか、…納得』
この事件の経緯を知り、彼女は小さく笑みをこぼした。
一年ぶりに見る笑顔は、以前と同じように優しかった。
「あの、みつるぎけんじさん!」
『…む?』
「愛しい方と再会して何か言うことはないのですか?」
彼女の期待するような瞳は"愛の言葉"とやらを望んでいるのだろうし、成歩堂の視線は"謝罪"を求めてるのだろう。
「う…ム」
『春美ちゃん、もう御剣君は私の聞きたい言葉は言ってくれたよ』
「え!ですが、"ただいま"としか…」
『うん、それが聞きたかった』
驚いた。皆がそんな顔をした。…私も含めて。
「雨月さんいいの?愛の言葉とか聞かなくて」
ニヤニヤとする真宵くんに、雨月はにこやかに頷いた。
『だって、"ただいま"ってことは御剣君が無事に帰ってきた証拠だし、私が帰る場所ってことだもの』
これで十分よ。
そういった彼女に、糸鋸刑事は頭を掻き、真宵くんは笑い、春美くんは照れ、成歩堂は複雑な顔をしていた。
「自分は帰るッス、これ以上ここにいても惚気を聞くだけみたいッスから」
「私達も終電だから帰ろっか」
「はいっ、大人の愛…しかと見させて頂きましたっ」
「じゃあ僕も帰ろうかな」
皆、ぞろぞろと病室を後にする。
"二度と泣かせるなよ"
成歩堂は小さく耳打ちして出ていった。
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