赤の似合う君と

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『一面にプリムラが咲いてるなんて、お伽話みたいだね』


花畑の中央に建つ展望台の最上階、平日の為か、殆ど貸し切り状態のそこで。
見渡す限り続く淡紅色の絨毯に、彼女は喜びの声をあげた。


「プリムラ?」

『桜草のことだよ。花言葉は、早春の悲しみ』

「?」

『春一番に咲いて、他の花が咲く前に散ってしまう。独りぼっちの桜草』

「……ここなら、悲しくないだろうな」

『うん』


植物園に行きたがるだけあって、花が好きでそれらに詳しかった。


『怜侍、あっちも行こ』


捕まれた指先の冷たさに、2月の終わりの肌寒さを感じる。
その指を握り返し、並ぶように歩いていく。


「急がなくても花は逃げないが」

『でも、早く見たい』


桜草の中の細い小道を私を引っ張って連れていく。
右も左もずっとずっと淡紅色で。
その鮮やかさの向こうに、温室らしい建物が見えてきた。
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