赤の似合う君と
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(彼は、私を解ってくれた)
"ありがとな…"
その一言で全てが報われた。
私が待ち続けた日々は無駄じゃなかったんだ。
『ありがとう、怜侍。私は君のお陰でくじけずに最後を迎えられた。悔いがないわけじゃない…それでもいい終わりだった』
怜侍と吐麗美庵に向かう途中。
運転してくれる彼の隣で語りかける。どうも正面からは恥ずかしくて言える気がしない。
「いや…私は何もしていない。貴女が強かったのだ」
『ばーか』
「ば…っ?」
『私が強くあれたのは君のお陰。守る者なしに、支えてくれる人なしに強くなんていられないわよ』
不思議な気分。
あんなに重くのしかかっていた不安が一気になくなった。
「…」
『あ、怜侍その角左!』
「ム!」
吐麗美庵に着けば、フレンチとは思えないテンションで祝杯が上がっていた。
「ちょっ、未成年は飲んじゃ駄目っス!サイダーにするッス!」
「真宵様!この飲み物は口の中がパチパチしますっ!」
「それがサイダーだよ、はみちゃん♪」
フレンチ料理風の何かが並ぶテーブルを成歩堂君、真宵ちゃん、春美ちゃん、冥ちゃん、糸鋸刑事が囲んでいる。
「あら、やっと来たわね。料理終わっちゃうわよ」
「…自分の給料も終わりそうッス…」
「…無理をするからだ」
『部下に奢らせたりしないよ、私が払う』
「羽影さん太っ腹!」
何とも賑やかで、綾里の二人が笑顔でいてくれるのが嬉しい。千尋さんとも話をしたいところだけど、とりあえずいいか。
「………予想通り足りねぇッス」
『だから私が払うって言ってるのに』
「女性に払わせる訳にはいくまい。だろう、成歩堂?」
「えっ、僕!?」
『はいはい、後輩と祝われる側は大人しくご馳走されなさい』
「羽影さんご馳走様です!」
「ありがとうございます!」
『どういたしまして』
私がこの子達にできるのはこのくらいしかない。
喜んでくれて何よりだ。
「羽影雨月、感謝してるわ。法廷で御剣怜侍と戦わせてくれた事」
『冥ちゃんと御剣君なら、上手くやってくれそうだと思って頼んだだけよ。そういって貰えて何より』
「…機会があれば貴女とも戦ってみたいわ…。またいつかね」
お店を出て、冥ちゃんと別れる。
続いて糸鋸刑事とも別れて、成歩堂君達を駅まで見送った。
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