赤の似合う君と
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『わぁ…懐かしいな』
大きな水槽、色とりどりの魚、独特のひんやりした空気。
ここにくるのは2年半ぶりだ。
「約束したからな、また来ると」
『覚えててくれたの?』
見上げてきた彼女に頷いて応ずれば、にっこりと笑って"嬉しい"と言った。
前回は彼女に腕を引かれていたけれど、今回は自分がその手を引く。
『この前はグラスフィッシュ見て、磯巾着見て…』
「この大きな水槽も足を止めたな」
『そうそう、怜侍は食物連鎖の心配してたっけ』
クスクスと笑う彼女。
今でもサメと他の魚が共存している水槽は不思議に思っているが…黙っていよう。
繋いだ手を引き最後に辿り着くのは、やはりあの水槽で。
「ヨツメクラゲ、だったか」
『うん。花みたい、っていったやつだよね』
あの時のように片手を水槽について眺め入る。
その横顔からはあどけなさが抜け、すっかり大人の女性になっていた。
『次はいつこれるのかな』
「貴女がいきたいといえば、その時に」
『期待してるよ』
ふふ、と笑って水槽から離れていく彼女。
『今回はイルカショーも見ようよ、この時期のお昼近くなんて混んでないと思うし』
「あ、ああ」
大人、にしてはいたずらっぽく笑うものだから。
どぎまぎしながら、やはり彼女に手を引かれて広場までいくことになった。
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