赤の似合う君と

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飛行機で犯人扱いをされ、帰国すれば狂言誘拐に巻き込まれ。
挙げ句私の執務室で殺人が起きていた。
一体何なんだ………。


『どうも連絡来ないと思ったらそういうことね』

「申し訳ない、今犯人を捕まえたところだ」

『…仕方ないね』


彼女とも久しぶりの再会なのに、感動的にならないのはいつものことだ。


『怜侍…こめかみ怪我したの?』

「…ああ、昨日のごたごたでな」

『まったくもう…』


呆れながらも、彼女が心配してくれているのは手にとるように解る。


「さあ、家に帰ろう?」

『…うん』


彼女に渡した新居の鍵。
引っ越しも済んで、もう殆ど住める状態らしい。
彼女曰く、最近忙しいくて帰れていなかったから、掃除ができていないとか。


「…まあ、通常生活に支障はないだろう」


広い部屋。必要最低限のものは整頓されているけれど、多少段ボールが残っている。


『ごめんね、あんまり片付かなくて…』

「いや、貴女一人にやらせるつもりはないから、気にしないでくれたまえ」


"ありがと"

小さく笑った彼女は、本当に疲れているように見えた。


「明日は休んだらどうだ?」

『え…』

「仕事も終わったのだろう?顔色も悪いし…」

『怜侍は?』

「私は、ヤタガラスのことで明日は調べ物をしてくる。もしかしたら夜中になるかもしれん」

『…そっか』


寝巻に着替えてベッドに潜り込む彼女の顔には、深い影が見えて。


「何か、あったのか?」

『…ううん。何にも。たださ……、早く帰ってきてね?』

「…、ああ。できるだけ急ごう」


きっと、寂しかったのかもしれない。
などと頭を過ぎって。
同じベッドに入りながらその体を引き寄せる。


「貴女は、よく休むといい」

『うん。そうする』














今思えば。

一緒に捜査に行っていた方がよかったなんて。

どうして気づけただろうか。






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