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「警察署に戻るんですよね?」

『私が検分結果持ってても仕方ないからね』

「なら、一緒に行きませんか…なんて……」

『君は、パトカーに護送されたいのか』

「いやいやっ」

『警察と弁護士が仲良くしてるのも、変な誤解を産むから遠慮しとくよ。じゃあね』


何を言い出すのかと思えば…。
ただでさえ隠蔽だの捏造だのと言われている時代に、余計なことに巻き込まれたくない。
彼にそんなつもりがないことは重々承知だけど、周りがどう思うかは別だ。







『…じゃあ、私はこれであがりますね』

「ああ、ご苦労さん」


上司に資料や結果を渡して、エントランスへ向かう。
なんだかんだで昼すぎだ、お腹も空いたけれど、眠い。何か買って帰ろう。


「あ!雨月さん!」

『…また君か…、なんだっけ、ダイジョウブ君?』

「…オドロキ、です」

『で、何の用かな、オドロキ君?』


留置所の方から駆け寄ってきたオドロキ君。大方、依頼人と話をしてきたのだろう。


「何…ってほどじゃないんですけど…」

『じゃあ、さようなら。私本当は今日非番なんだよ。帰って寝るから』

「あ、あの、お昼…食べました?」

『まだだけど』

「よ、よかったら、一緒にどうですか?」


…この子は人の話を聞いてないんだろうか。
朝会った時に仲良くするつもりはない、というニュアンスを伝えた筈だし、今も眠いということを伝えたんだけども。


『何、奢ってでもくれるの?』

「…リーズナブルなものなら」

『はぁ、今回は遠慮しとく。依頼が片付いて気が変わってなかったら誘って』


弁護士の財布事情が芳しくないのはよく知ってる。
大体、どう見ても年下のこの子に奢られるのも釈然としない。


「はいっ!裁判明日なんです、だからそのあと…」

『…私、明日も非番だから』


じゃあ、機会があったら。

後ろ手にヒラヒラと手を振って署を後にする。

どうもあの子は苦手だ。
まっすぐ過ぎるし、やたらと馴れ馴れしい。
名前もフルネームを教えた筈なのに下の名前で呼んでくる。
…それはジャラジャラした検事も同じなのだけど。


でも、いい子だとも思う。
さすがに今日は頭に響いたけど、明るい挨拶とか、若々しくていい。






(まだ、始まりにもならない朝)







「…機会があったら、か」

「望みなし…ってわけじゃなさそうじゃない?オデコ君」

「いや、結構あしらわれてる気がするんですけど」

「彼女が返事をしてくれるだけいいよ。僕なんか3回に2回は無視されるからね」

「…牙琉検事、しつこすぎるんじゃないですか」




(真昼の太陽も続きを知らない)




Fin.
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