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「雨月さん!」


今日は寝不足じゃないから、頭に響くこの声もそう不快じゃない。
まあ、もう少し小さい声でも聞こえるから抑えてもらっていいのだけど。


『何?えぇっと…オド…、なんだっけ?』

「オ・ド・ロ・キ・ホー・ス・ケです!あの、昨日言ってたことで…あんまり高いのは無理ですけど、よかったら一緒に夕食を…」


呼びかけるのは元気なのに、段々と萎んでいく声。


『私さ、年下に奢られるのは嫌なんだ』

「…う」

『それに、恩義のない相手に奢る趣味もない』

「…」

『さあ、考えてごらん』


キョトン。本当にそんな表情をした。案外年下も可愛いかもしれない。
首を捻ったり、額を自分で突いてみたりしながら、何かに気づいたように彼は口を開いた。


「俺と食事に行くこと自体は、嫌じゃない…って捉えていいんですか?」

『まあね。ああ、あと私は今日も非番を潰されて機嫌が悪いんだ。気が変わっちゃうかもしれない』

「す、すぐ手続き済ませてきますからエントランスで待ってて下さい!」


駆けていく赤いベストを見送って、荷物を取りにロッカーへ向かった。
何だかお腹も空いてきたし、今日はあの子に付き合ってもいいかな。







君に少し近づいた夕方



「やりましたよ牙琉検事!雨月さんとご飯一緒に行けそうです!」

「まさかオデコ君に先をこされるなんてね…僕は開廷前にコンサートに誘ったけど断られたよ」

「売り付けたんですか?」

「…本命の子にはプレゼントしようとしたよ。渡すことも出来なかったけどね。流石に3回も断られるとちょっと堪えるな」

「一回目で断られたら手法を変えましょうよ…」





昇り来る月は結末を見れるか






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