TWINKLE
□05
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『さて、そろそろ観測できるかな』
覗き込んでいた望遠鏡から顔をあげて、彼女は夜空を見上げた。
因みに、さっきまでみていたのは「アルビレオ」という連星で、はくちょう座にある星だ。
「流星群って、よく見えるものなんですか?」
『そうだね、こうやって寝っ転がって……』
「うわっ!」
『ぼんやりと、視野を広く見てると結構沢山見れるよ』
急に俺の手を引っ張ってシートに倒れ込んだ雨月さん。ちょっとだけ背中が痛かったけど、楽しそうな笑顔を見たらそんなことは一瞬で忘れてしまう。
「…あ!今!通りました!」
『本当だ。でも、1個くらいではしゃがないでよ、流星群なんだから。貫徹すれば20なんて軽く見れるんだしさ』
胸を上下させて笑う彼女に、何だか幸せな気分になった。
だから思わず、引っ張られてた手を強く握り返して俺も笑う。
「でも、俺。雨月さんと見れた流星だから嬉しいです!」
『……そう』
「はい!」
『やっぱり、ホースケはあざといよ』
「あざ…」
『なんか私、全然可愛くないじゃん』
ぎゅっと、握り返された指。拗ねたように尖らせた唇。
「雨月さんの方が、ずっと可愛いです」
『…可愛いくない』
「可愛いです」
『流星群見に来たんでしょ。こっちじゃなくて空を見なよ』
「俺は、雨月さんと見に来たんです」
そういって視線を空へ戻せば、彼女が息を詰めたのが解った。
そして、肩に何かが当たる。
「…?」
『私も、ホースケと見に来たんだからね』
それが彼女の肩だと気づいて。余りにも近い距離に、今度は顔を動かせなくなった。
『綺麗だね』
「…はい」
目の前を横切っていく、いくつもの流星。
視界の端に映る、彼女の横顔。
全部綺麗だった。
『ホースケ、』
「なんですか?」
『もし。もし、よかったら。また』
一緒に見に来ようね。
「もちろんです!」
何度でも、一緒に。
そう願った時、一際尾を引く星が流れていった。
『…その時は今日教えたこと覚えてるかテストしてあげるから』
「…頑張ります……」
Fin.