TWINKLE

□05
3ページ/3ページ



『さて、そろそろ観測できるかな』


覗き込んでいた望遠鏡から顔をあげて、彼女は夜空を見上げた。

因みに、さっきまでみていたのは「アルビレオ」という連星で、はくちょう座にある星だ。


「流星群って、よく見えるものなんですか?」

『そうだね、こうやって寝っ転がって……』

「うわっ!」

『ぼんやりと、視野を広く見てると結構沢山見れるよ』


急に俺の手を引っ張ってシートに倒れ込んだ雨月さん。ちょっとだけ背中が痛かったけど、楽しそうな笑顔を見たらそんなことは一瞬で忘れてしまう。


「…あ!今!通りました!」

『本当だ。でも、1個くらいではしゃがないでよ、流星群なんだから。貫徹すれば20なんて軽く見れるんだしさ』


胸を上下させて笑う彼女に、何だか幸せな気分になった。
だから思わず、引っ張られてた手を強く握り返して俺も笑う。


「でも、俺。雨月さんと見れた流星だから嬉しいです!」

『……そう』

「はい!」

『やっぱり、ホースケはあざといよ』

「あざ…」

『なんか私、全然可愛くないじゃん』


ぎゅっと、握り返された指。拗ねたように尖らせた唇。


「雨月さんの方が、ずっと可愛いです」

『…可愛いくない』

「可愛いです」

『流星群見に来たんでしょ。こっちじゃなくて空を見なよ』

「俺は、雨月さんと見に来たんです」


そういって視線を空へ戻せば、彼女が息を詰めたのが解った。
そして、肩に何かが当たる。


「…?」

『私も、ホースケと見に来たんだからね』


それが彼女の肩だと気づいて。余りにも近い距離に、今度は顔を動かせなくなった。


『綺麗だね』

「…はい」


目の前を横切っていく、いくつもの流星。
視界の端に映る、彼女の横顔。

全部綺麗だった。


『ホースケ、』

「なんですか?」

『もし。もし、よかったら。また』


一緒に見に来ようね。


「もちろんです!」


何度でも、一緒に。



そう願った時、一際尾を引く星が流れていった。






『…その時は今日教えたこと覚えてるかテストしてあげるから』

「…頑張ります……」



Fin.


次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ