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□As usual birthday
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「え、誕生日明日なんですか」

『うん』

「なんでもっと早く教えてくんないんですか!」

『…自分の誕生日をスピーカーする人の方が少ないんじゃないの?』


電話越し、明日の予定が空いたから、彼女も空いてたらいいな…なんて思ったらこれだ。
なんであの人は…


「そうかもしれませんけど、俺は、貴女の恋人として全力で祝いたいんです。祝わせて欲しいから、できれば準備とか……色々したかったというか、知ってたら最初から休み取ってましたし」

『そういうの重い。祝いたいだけなら当日じゃなくていいじゃない、したいだけ準備してよ来月で全然いいから』

「誕生日ってそういうものじゃないでしょう!」

『…じゃあ、ホースケは自分の誕生日、私に休暇取って祝って欲しいの?』


熱くなる俺とあくまで冷静な彼女の声。
最後の質問で、少し頭が冷えた。


「……それは、嬉しいですけど、申し訳ないです」

『それは私も一緒なの。わかった?』

「はい……あ、でも、ちょっとでもいいから会いたいです。会えないなら、せめて声を…それも駄目ならメールでもいいです。…覚えてて欲しいって、思います」

『……』

「大切な人の誕生日、その人が今ここに居ることを祝える素敵な日です。俺は、貴女が生まれた日を共有したいから、だから、明日っ」

『……っ、わかった、わかったわよ!』


冷えた頭はまたすぐ熱くなって。
彼女の焦った声で会話が中断される。


「……」

『…それ以上は、明日聞く。……明日、オフだから』

「!!」

『…けど!プレゼントとか要らないし、大袈裟な準備も要らない。……最高の日常を、ちょうだい』

「はい!」


ああ、彼女はどんな顔で電話してるんだろう。
俺は完全に緩みきった頬を戻すことが出来ないでいた。

俺と彼女の日常は、天文台か博物館へのデートと飾り気のないランチ、ディナーはラーメンという安上がりなのだけど。
時折手を繋いだり、指を絡めたり。
そんな幸せを、彼女の誕生日に共有できる。


「じゃあ、何も用意しない代わりに、明日は貴女の好きなところに行きましょう」

『国立博物館』

「…即答」

『丁度明日からフタバスズキリュウの特別展示があるの!』

「ええ、行きましょう。俺も楽しみです」


きっと明日、彼女は笑顔に違いない。
その笑顔を、一回でも多く見たい。


『また、明日ね』

「はい、また、明日。あ、フライングですけど許してください。一番は譲れないんで」

『え?』

「1日早いですけど、誕生日おめでとうございます」

『…明日、聞くって言ったのに』

「明日もいいますよ。では、おやすみなさい」








次の日、彼女と化石を見て、牛丼を食べて。

しょっぱい味噌ラーメンをすすって。

時折、手を繋いで。

それから


『…何も要らないっていったのに』

「それでも。今日、俺が貴女と過ごせた記念です、受け取ってください」


惑星をモチーフにしたブローチ。


『……ありがと。今日、ホースケと過ごせて良かった』

「…、こちらこそ、ありがとうございます」

『………私も、最高の日常あげるから…ホースケの誕生日、教えてくんない?』


あ、俺も教えてなかった。



fin


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