赤の似合う君と
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「海月(クラゲ)、とは良く言ったものだな…」
『ん?』
「海の月、似ているではないか」
ぼんやり光るように見える様は確かにそう思わせた。
『そうだね…』
『ミズクラゲってね、ヨツメクラゲとも言われてるんだよ』
「四つ目?」
『そう、この模様が目に見えるんだって』
怜侍は暫く目をこらして海月を見ていた。
海月の頭には、円の模様が4つある。
「私には…花に見える」
独り言のように呟いた彼に、またもや、くすっ、と笑ってしまった。
「だからっ」
『違うの、私も同じように思ったから』
「…」
『花紋みたいだよね』
うっとりと水槽に片手をつき、海月を見遣る。
依然として怜侍を掴んでいた左手。
急に掴むものを失ったかと思うと少しひんやりした温もりに被われた。
指を絡めて、緩く握れば彼がこちらを向いた。
『今日は君と来れてよかった。ありがとう、怜侍』
彼の手に少し力が入る。
「私も、貴女と来れてよかった。ありがとう、…雨月」
ゆっくり、どちらともなく出口へ向かう。
『また、来たいな』
「また来よう。必ず。」
心のどこかで、この手が離れない事を祈った。