赤の似合う君と

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……

…………

その頃、近所では連続殺人が起きていた。
計画的無差別殺人。
最も質の悪い犯罪が。

毎週金曜の夜、地区で一人がナイフで刺殺されていた。
しかし、一度も凶器は見つからなかった。

5人目の被害者が出た朝、父は被疑者として連れていかれて…起訴された。

根拠は"現場の公園の横を走り去るのを見た"という目撃証言だった。

その日は弟の誕生日で、遅くなった父は走って自宅に向かっていた。

…ただそれだけだった。


「まさか…」

『冤罪。私はそう思ってる』


その証言以外は大した証拠も証言もなかった。
同時に、父のアリバイもなかった。
父は毎週金曜に残業をしていたから、犯行時間と帰宅時間が重なり、疑いは濃くなった。

そして、裁判の最終日が来たとき、悲劇が起きた。


"異議あり!検察側は証拠を提出する!"


凶器のナイフが提出された。指紋は着いていないが、被害者と父の血痕が残っているということだった。
あの時の父の顔は酷く青ざめていた。

そのナイフが決め手となり、父は有罪判決をくだされた。

被害者の家族、世論は死刑を訴え、私の家は凄まじい嫌がらせを受けた。

窓から石が投げ込まれたり、電話が鳴り止まなかったり。
引っ越すお金もなく、こんな状態では母方の実家も父方の実家も受け入れてくれなかった。

一週間後、家の食料が尽きて私が買いに行く事にした。ノイローゼ気味の母や、怯えた弟を外に出してはいけないと思った。

非難の嵐を浴びながら買い物をして、家の前に着いた私はそこに崩れ落ちた。


『家がね、燃えてたんだ。気味が悪いくらいの赤さで。今でもこびりついて離れない、熱さと赤さ…』


雑踏の中に母と弟の姿は見えなかった。

"お母さんっ、祐樹っ"

"危ないから下がって!!"

"母と弟が中にいるんですっ!!"

"この炎じゃもう…"



お母さん、ゆうき…っ!!




………

……………

捜査の結果、出火原因は放火。母も弟も、死因は窒息だった。


「煙に巻かれたのか…」

『ううん、無理心中、母が弟の首を絞めて…母はロープで』


結局、放火犯は近所の子供。未成年だったし、火事のせいで死んだ訳でもないから、大した罪にはならなかった。

"無罪の人間が死刑で犯罪者がのうのうと生きてるのか…"

その知らせを聞いた父は獄中で狂死してしまった。





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