赤の似合う君と

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2月22日


彼女の胸騒ぎというものは的中してしまった。
首席検事の殺人容疑に、現場が私の車…想像以上だった。


「…なあ御剣、羽影さんが検事にはならなかったのか?」

「そうですよね、羽影さんの方が先輩に当たりますし…」

「彼女は今、高裁に行っているからな…」

「「えっ」」


しかも担当弁護士が成歩堂で、被疑者の妹を連れて私の執務室まで来ていた。
雨月がいれば…きっと彼女が担当したであろう事件。
まだ、やることは山積している…


「ここに、御剣って人いるでありますかっ!」

「関係のない資料を持ってくるなと伝えたではないか!」


苛々しているのも加えて、ここでミスをしたのを知るのは翌日の裁判でだった。



2月23日 法廷

巌徒局長…あの人が法廷に出て来た。そして、自分のミスを知った。


「浮かれてたのは解るけどね、過失はダメだよ御剣ちゃん。それとも…羽影ちゃんがいないとダメなのかな?」

「なっ…」

「なるほどちゃんも自立したんだしさー。いい加減、いつまでも彼女に頼ってちゃダメだよー」


そう、あの人は最後にそういって出ていった。
確かに、彼女に助言を仰ぐ事はあった。頼り過ぎているのか?私が…






『もしもし、怜侍、大変な事になったね』


その夜、自宅に着いた私に電話が入った。


「ああ…貴女の方は大丈夫なのか?」

『うん、ちょっと手こずったけど明日の裁判でけりがつくと思う』

「そうか…」

『大丈夫?怜侍…疲れてない?』

「あぁ、問題ない…貴女も無理をしないでくれたまえ」

『ありがと』


彼女の声色がいつもより明るいのは、疲れているのを隠しているから。
それを指摘したりしないし、咎めることもない。


『巴さんの事…何か力になれることない?』

「今回は…」


何故彼女が、何故私の車で、何故今あの事件が、…何故指揮権が警察局に…

「今回は、問題ない。私なりに調べる」

『そっか…無理しないで。いつでも相談して、ね』


"いつまでも彼女に頼ってちゃダメだよ"

雨月に、頼ってはいけない…


「…まだまとめたい事があるのだ」

『うん、わかった。またね』

「ああ」


電話を切ってソファーにもたれる。
局長のいう通り、彼女の助言のない大きな事件はなかったかもしれない…。


「自立…か」


独り言はそのまま空気に吸い込まれた。
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