赤の似合う君と

□15
4ページ/5ページ



「この寝坊助に、何か用かい?主席検事と…上級検事」

「異議あり、と言いに来た」

「…証言台でなけりゃ無意味な台詞だな」


赤いマスク越しに注がれる視線と、傍らで必死に立っている雨月に、緊張が走る。


「貴方を待っている者はいた」


表情が読めず、言葉を詰まらせれば、口を開いたのは向こうだった。


「知ってたさ。久しぶりだな、雨月」

『…っ!』

「だが法廷ではっ」

「医者から通って来る女がいると聞いていた。だが、そのボウヤがいる。らしくねぇな、妬いちまったのさ」


笑うようなそぶりに、込み上げていた負の感情は行き場を失う。


『私を、嫌いになったんじゃないんですね?』

「まさか。まあ、検事になった時は驚いたし…ヒラヒラのボウヤとの噂を聞いたから…な」

『私は御剣君と成歩堂君の様な関係を夢見ていました。だから、検事になって貴方と肩を並べたかった』

「それが、検事になった理由か」

『ええ…』


少し緊張が解れたような彼女に一安心する。
ボウヤ、は頂けないが。


「ボウヤとの噂は否定しないんだな」

『この状況で否定も何もないでしょう』

「クッ、つくづく妬けるな」

『赤も理由ですか…?』

「流石だな。気づいたかい?」

「どういう事だ?」


二人は顔を見合わせて、困ったように笑った。先程からついていけてない。


「俺が赤を見れねぇのは解ってるよな?」

「ム、」

『御剣君のスーツ、何色?』

「…!」

「好きな飲み物は何色だ?」

「…!!」


ワイン"レッド"のスーツに、"紅"茶。


「情けねぇ話だ。見えない色に妬くなんてな…」


自嘲気味に笑うと、バイザーから血が滴った。


『なっ、まだ治療受けてなかったんですかっ』

「せっかちなお客が来ちまったんでな」

『〜〜っ、保健師さんに手続きとってきますっ』


慌ただしく部屋を飛び出した彼女を視線で見送る。

しばし茫然としていると向こうから話し掛けてきた。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ