赤の似合う君と
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「御剣、だったな」
「…なんだろうか」
「俺が言えたことじゃねぇが、アンタにアイツを守れるのかい?」
「…」
「知っているかもしれねぇが、アイツもそれなりに苦労した道を通ってる。…これ以上苦汁を飲ませる必要はねぇ」
「…」
「お前は傍にいてやれるのか?御剣」
ダンッ、と机を叩く音。
雰囲気から如何に本気かが伝わってくる。
「私はまだ未熟だ…彼女の支えが務まるか解らない。だが、二度と泣かせないと誓った」
「…そうか」
先程の熱さとは打って変わって。落ち着いた、冷静な声色が続いた。
「クッ、俺はまた守ってやれる立場じゃなくなっちまった。…頼んだぜ、雨月のこと。泣き虫で寂しがりだからな」
「…承知した」
『手続きとれましたよっ、すぐに行って下さい』
「ああ」
彼女は駆け込むやいなや早口に叫んだ。
神之木も答えて立ち上がる。
『…刑期終わってコーヒー屋のマスターになったら呼んで下さいね。待ってますから』
「…ありがとな」
背を向けて部屋を出ていく彼を見送る。
心做しか、雨月の表情が晴れやかだ。
「…私達も行こう、糸鋸刑事がレストランを予約してくれたようだ」
『えっ、糸鋸刑事が?…行こう!なんてお店?』
「確かトレビアンと言っていたな」
『…吐麗美庵……やっぱりね』
一瞬引き攣った様だったが、楽しそうに笑った。
『怜侍場所知らないでしょ?案内するよ』
「む…お願いしよう」
泣き虫で、寂しがりな彼女。
泣かせてしまうのも、
一人にしてしまうのも私だ。
(私も
もっと強くならねば
彼女のこの笑顔を
守れないのだろうな…)
Fin.