赤の似合う君と

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執務室で寝るのはどうにも寝心地が悪い。
まあ、ソファーがあるとはいえ職場なんだから仕方ないけど。
10日も続ければ流石に節々が痛かったりと、色々ひどい。


なんて、朝になっても起きれずにいれば、突然鳴る携帯電話。


『も、もしもし』


ディスプレイの文字を見て慌てて通話ボタンを押した。


「すまない、寝ていたか?」


待ち焦がれた声。紛れもない彼のもの。


『ううん、起きてたよ。仕事終わらなくて執務室に泊まってたけど』


半分嘘で半分本当だ。
家に帰らない口実の為にわざわざ仕事をいれているのだから。


「あまり、無理をしないようにな」

『ありがとう。怜侍もね、無茶しないように』

「ム…」

『その反応は何かした後ね…』

「まあ、いろいろあってな」


機械越しに聞こえる苦笑がどこか懐かしい。


「…今夜には検事局へ戻る、遅くなってしまうだろうから、」

『あっ、今日は私も多分遅いから、落ち合って一緒に帰ろ?』

「ム、しかし…」

『察しなさいよ、一秒でも早く会いたいんだから』


やっぱり、嘘と本当を半分ずつまぜて。通話口に囁けば、くぐもった声で"解った"と聞こえた。
もしかしたら、照れてるのかもしれない。


『あ、怜侍』

「なんだろうか」

『いや…何があったのかなって』

「帰りに事件が起きてしまってな、巻き込まれていた」

『え、大丈夫なの!?』

「ああ、もう解決済だ」


さすがだなぁ。
なんて、疲れた頭で笑みを零した。


「では、用事が済んだら貴女の執務室へ呼びに行こう」

『うん。仕事終わってたら私から行くから、着いたら連絡頂戴ね』

「心得た」


早く帰ってきて。
と言えない私は弱虫かもしれないし、強がりなのかもしれない。


『じゃあ、夜に』

「ああ」


私の頭はどうやら単純らしく。
寝心地の悪かったソファーの上なのに、彼の声を聞いた途端に眠気に襲われて。
ついうとうとと二度寝を始めた。




(早く)


(早く夜になればいい)







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