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「やあ雨月ちゃん、すまないね。急に呼び出して」

『…私は何を証言するのでしょうか』

「現場の状況についてだよ。概要や動機、経路は僕や当人達が証言するから」

『了解』

「あ、あと、ガリューウェーブのコンサートが今度あるんだけど」

『すみません、音楽には興味がないので』


何度も誘われて正直面倒くさい。音楽に興味がないのも事実だし、特にロックの類は理解ができない。あと、大切な非番で疲れたくない。




「検察側、弁護側、及び証人は入廷して下さい」


係官の声で法廷に足を踏み入れる。この緊張した感じ、余り好きではない。

冒頭弁論があって、私の証言があって。弁護側の尋問。


「…なぜ、あんな人気のない場所を通ったんでしょう?」

『…当人に聞いたらいかがですか』

「凶器はどこで見つかったんですか?」

『自首するときに持参してくれました』

「…」


こんな調子で私の出番は終わり。
犯人は自首していて、証拠も揃っている。疑いようのない事件だったのに、それは意外な一面を見せた。


「…あなた、自分が刺した時の証言をすると、肩を押さえますよね?」

「…え」

「被害者が刺されたのは左側の脇腹です。なにか、肩を痛めるようなことが…?」

「な、ないっ…傷なんてない!」

「誰も、傷があるなんていってないよ?」

「あっ…」


そんな小さな綻びで。事件の真相は顔を出した。
飲みに行った友人と口論になり、友人が刃物で切り付けて来たのでとっさに抵抗したところ、逆に刺してしまった。口論の内容を反省していて、友人をかばってしまった。
というのが容疑者の証言。
しかし、これによって召喚された被害者の証言や、実際は被害者の持ち物だった筈の刃物から被害者の指紋が一つもでない事を追求していくと、殺意があってあの公園に呼び出したことが解った。

結論からいえば、正当防衛が認められたのだ。

簡単だった筈の事件は展開を繰り返して、大分時間をとった。
……もう、夕方だ。
また私の非番は半日なくなってしまった。
まあ、今回はゆっくり寝れただけいいか。

なんて閉廷した法廷を出ながら考えていれば、昨日も聞いた元気な声に呼び止められた。







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