Treasure

□水底で息をした
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貴方が水なら、私は人魚。
あなたなしでは生きられない。


水底で息をした


FBIで赤井さんと初めて出会ってから、恋をするのに時間はかからなかった。
鋭い瞳、仕事ができて無口な人…見ているだけで好きになった。

「…?どうした、お嬢さん。俺の顔に何か付いているか?」
「!…いえ、何も…すみません」

赤井さんは私のことを"お嬢さん"と呼ぶ。いくらか年齢が離れている私のことをこども扱いしているようだ。

『本当は…対等な立場でいたいんだけどな…』

それは仕方ないのかもしれない。赤井さんは水で、私は人魚。
水に依存しなければ生きていけない一方通行な関係。

『…好きです、赤井さん』

心の中だけで呟く。まるで声を失った人魚のように。

「困ったな…」
「?どうかしたんですか?赤井さん」

赤井さんの呟きに私は反応する。じっと赤井さんの顔を見つめていると、赤井さんの顔がすぐそこまで近づき壁に押し付けられた。

「???あ、赤井さん…?」
「お嬢さん、君は気づいていないのかもしれないが…」

君は俺のことを、いつも熱の籠った瞳で射抜いているんだよ。

「!!!」

そう言われて顔から火が出そうなほど赤くなり、恥ずかしくなった。バレていたのだ、赤井さんに恋していることが。

「す、すみません、迷惑ですよね…すみません」

じわり。涙が滲む。
ふと、顔に影が落ちたかと思うと赤井さんの唇が私の目尻に触れた。

「っ…赤井さん…?」
「逆だよ。いつも君の視線に焦がれていた…好きだ、羽影。俺のそばにいてくれないか?」
「!…はい、喜んで…!」

私がそう言うと、赤井さんは柔らかく微笑んで私の額にキスをした。
おとぎ話の人魚姫は泡になって消えてしまったけれど、私は消えない。

私の王子様は、水底で私を待っていてくれるから。

Fin


水底の花へ、愛を込めて





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