僕の涙と君の声
□プロローグ
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全国大会が終わり、他の学校の三年は引退している中、氷帝の面々は未だに部活に力を入れた夏休みを送っていた。
氷帝学園はエスカレーター式で高校生になれるので、学校のルールとして「2月までは部活に専念する」というものがあった。
2月には部長を交代するが、それまでは3年生は大会などには出ない。
それほど大きな大会はないが、そういう決まりになっている。
そして、次期部長は既に決められていた。
日吉若。
彼はそのことをまだ知らない。
部長交代の日になるまで、2年生の誰にも明かさない、というのが現部長の考えだった。
今日はまだ残暑が続く中、次期部長になる日吉は自宅の庭で素振りをしていた。
この暑さでは動かなくても汗が浮き出てくる。
日吉はそんな暑さには負けず必死に素振りを繰り返した。
そんな中、突然携帯が唸りを上げた。
珍しくズボンのポケットに携帯を突っ込んでいたため、すぐに気付くことができた。
画面表示を見ると『忍足侑士先輩』と表示されていた。
「忍足先輩から…?」
滅多にメールも電話も来ない先輩だったので驚きを隠せなかった。
だからなのかも知れないが、嫌な予感がしたのだ。
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