※カカイル短編2※

□額当て
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『 カカシさんも他に飲み友達居るだろうに…。 』

何が良くて冴えない中忍教師など誘うのか?
気兼ねしなくていいのかもしれないが、時々変な期待もしてしまうから困るのだ

そろそろ額当ての事も時効かな…と言うのと
結局カカシは気付かずじまいらしく、自分の罪悪感も薄れてきたのとで

「はい。もういいかもです。行きますか?」

クイッと猪口を傾ける仕草をした

「長かったねぇ。俺にしてみりゃ半年は待った気分ですよ。」
「 ハハハ!ありがたき幸せです!そう思ってくださるなんて。」

明るく笑うイルカに、疲労感が見て取れない事で安心したのか
カカシも優しく微笑み言った

「じゃあ、いつもの居酒屋にしましょう。待機所で待ってます。」



そうしてイルカは受付の交代が済むなり、急いでカカシの待つ待機所へ向かい
二人は いつもの居酒屋で久しぶりに楽しい時を過ごした。


帰り際、いつもの癖で外しておいた額当てをするべく手を伸ばす

イルカは談笑しながら、チラと軽く自分の額当てを確認しただけで
まさに“自分の”“小さな傷の有る”額当てに無意識に手を伸ばした。

「イルカ先生。」
「 はい? 」


カカシの手が、伸ばしたイルカの手を握る

「 !え?なんですか!? 」

こんな風に触れられるのが初めてだったので、酔っているとはいえドキドキした

「 違いますよ。 」
「 え? 」
「これは、俺の額当てです。先生のは そっち。」

そう言いながら、握りしめたイルカの手を
もうひとつの…あの日から今日まで身に付けていた本当のカカシの額当てへと置いた。

「 そ、そうですねっ!あははっ!そうでしたっ。」


ーーーーー 信じてる

カカシは、本当はイルカの額当ての方を自分の物だと信じているのだ。

「 大丈夫?先生。顔色悪くなってきたよ。送りますよ。」
「 あ…いえ…。あの、大丈夫だと…。」

いいからいいからと、カカシはイルカを立たせ
久しぶりに飲ませちゃったねと、お会計を払ってくれた。


外は星空 風も気持ち良い

だけど イルカの心に再び消えたはずの罪悪感が浮かんで来ていた

「 先生 ほんと大丈夫ですか? 」

いいよな。カカシさんは自分のだって信じてるのだから。

たかが額当てじゃないか。破損でもしたら、里から幾らでも支給して貰える品だ。

「 先生、あんたほんとに顔色悪いよ。吐きたかったら吐いていいよ。」
「 カカシさん…俺…」

「うん。こっちで吐きなさいな。おいで。」

カカシは公園の茂みの奥にイルカを連れて行き

「この木に片手を付けて、前屈みになって吐きなさい。」

甲斐甲斐しくも寄り添ってくれた。

そんなカカシにイルカの罪悪感は膨れに膨れ
本当の事を言わずにいれなくなった。

カカシさんのそれは前回飲みに行った時に“間違って”額に締めて帰った“俺の”額当てですと

「 カカ…カカシさん、その額当てですが…それって…」

カカシの顔を見ると やけに真剣な面持ちで居た

「あの…そ その額当て…」

心を見透かされているような、そんな気分になり不安で胸が締め付けられてきた が

「 俺のですよ。誰にも渡しません。…たとえ先生でも。」
「 ……。 」

冷たい口調で言われ、そこでイルカは初めて自分のやった事の重大さを知った。

たかが額当てだが、それぞれに個人個人の“思い”が宿っている物かもしれないのだ。

それなら尚更、それが本当は貴方の大事な額当てではないと教えねば

「カカシさん!!違うんです!!その額当ては本当は!!」

スッとカカシの人差し指がイルカの唇を軽く抑え静止した

「 カ…!? 」

よく見るとカカシが泣きそうな表情(かお)をしている


「 先生… 正しく言うと、これは“もう俺の物”。 たとえ“本当の持ち主のイルカ先生”が返せと言っても返す気は有りません。」
「 え…? 」

呆気に取られ、丸い目をしてカカシを見ると

「 ごめんなさい。前回飲んだ時、先生が間違って俺の額当てをして帰ったから…。」
「 ……そ‥それは…」

自分がワザとに‥

「 先生が気が付いたら笑って、からかって返そうと思ってました。でも もういいでしょう?」
「 カカシさん‥?」

「 !!! 」 カカシに抱き締められ、軽くパニックに陥る

「イルカ先生‥好きです。本当は ずっと隠しておこうと思っていたのに…。」
「 カカ… 」


額当てを交換して ひと月以上身に付けていると…


いや、そんな事は もういい


「 カカシさん…俺も貴方に伝えたい事が…」

不安そうなカカシの顔を
イルカが優しく覗き込んだ


俺も前から貴方のことが…

それから先は、カカシの耳元で そっと囁いた








 
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