≡ 連載もの・2 ≡

□たかが中忍されどイルカE
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料亭での飲み会から一夜開け
イルカは いつもの時間にアカデミーへと出勤した。

『またカカシさんと話しづらくなっちゃったよ…。』

なんだか機嫌を損ねて帰ったようだし。

『カカシさん…片思いなのかなぁ…。』

ゲンマも知っていたようだが、どうやらカカシは紅が好きなようで…

『だけど紅さんはアスマさんと仲がいいみたいだし…。』

職員室の机にカバンを置き、必要な物を取り出してゆく。

『カカシさんみたいな人でも、上手く行かない恋って有るんだなぁ‥。』

それならば自分の恋なんて、もっと上手く行かないに決まっている。

『せめて もう少しカカシさんと親しくなりたいのに…。』

それはイルカの淡い夢でもあった。



***



放課後

今日最後の授業を終えたイルカが、職員室へ向かって歩いていた時。

ふと、気づくと 何故か 擦れ違う人が皆
イルカの顔をチラチラと見ていく。

『…え?顔に何か付いてるのか!?』

しばらく歩いて、何気にトイレへ入り鏡を覗いたが…

「??変わりは無いよなぁ…。」
「お!イルカ!」

そこへ飲み仲間の同僚がトイレへ入って来た。

「お前、ゲンマさんと 付き合うんだって!?」
「 へ? 」

「あ〜 ごめん!“お友達から”って事だからお試し期間だっけ?」
「 はあ!? 」

驚いたイルカの脳裏に、夕べのゲンマの言葉が蘇ってきた。

“まずは お友達からだな!”

『嘘だろ!?ゲンマさんは冗談で言っていた筈なのに…。』

自分も適当に『はいはい。お友達からですね。』なんて返事して…

「で、イルカは結局どうなん?ゲンマさんの事…」
「ちょっと待てよ、どこから そんな話…。」

同僚はキョトンとして

「え?ゲンマさんから。」

お前の方こそ何故聞くの?と言った顔で答えた。

「ゲン…え!?」
「昼休みの終わり頃にさ、職員室に来て…」

最初はイルカを訪ねて来たようだったが、居ないのならいいと言い

「この度、俺 不知火ゲンマと うみのイルカは“お友達から”と言う形で付き合い始めたんで宜しく!!」

と、至極 明るく ニカッと笑って宣言して職員室を後にしたらしい。

「俺も現場に居たんだけどよ。皆 あっけに取られて あとは大騒ぎさ!」

あはは、と笑う同僚とは裏腹に イルカは青い顔で引きつっていた。
どうりで皆 自分の顔を見ていくはずだと理解した。

「で、イルカは本気で付き合う気あんの?」

ハッと我に返ったイルカは

「有るわけ無いだろ!!」


そう言い残し、ゲンマを探しにトイレを飛び出していった。




その頃ゲンマは、次回の中忍選抜試験に向けての打ち合わせの為
アカデミー内の会議室に 他の中忍、特別上忍達と集まっていた。

「マジか!?ゲンマ!!」
「なんでまた、イルカと!?」

ここでも「イルカと付き合う」宣言をしている。

「まあ、ちょっとな!俺達の事は、当分静かに見守っていてくれ。上手く行かないかもだし。」

取りあえず友達からだしね〜と、アハハと笑っていると

「失礼します!!」

パァンッと言う音と共に部屋の扉が開け放たれ
イルカが息を切らして立っていた。

「ゲ、ゲンマさん!あなた今日…」
「お〜、イルカかぁ!!何?寂しくて俺を探してた!?」
「 へ? 」

この人は何を…と、思う間もなく
部屋に居た試験官の忍び達がヒューヒューと囃し立てた。

「おいおい、友達からだなんて嘘くせえな。」
「すでに お熱い仲なんじゃないのかー!?」
「妬くなよ、おめぇら!ちょっと失礼するわ。」

ゲンマはイルカの体を廊下に押し出し
自分も部屋を出て、後ろ手に戸を閉めた。

「ゲンマさん、どういう事ですか?俺、同僚から聞いて…。」
「まあまあ落ち着け。“奴に自覚させる作戦”さ。」
「 は? 」


イルカは、まるで胡散臭いものを見るような目でゲンマを見た。

「言っただろ?カカシに少し自覚させないといけないからよ。」
「自覚って…。」

紅を抱きしめたり、アスマと良い雰囲気で飲んでる紅を見て不機嫌だったり
カカシは充分に自覚しているとしか思えない。

「ゲンマさん、もしかして勘違いなさっているのでは?カカシさんは充分自覚していますよ、きっと。」
「してない、してない!見ていてイライラするぐらいしてない!」

そうなのかな…と思ったが…そんな事より

「それより何故、俺とゲンマさんが付き合う事になってるんですか!?」
「そりゃあ、アイツに少し刺激を与えようと思ってさぁ。」

ヒヒヒと笑うゲンマだったが、イルカは溜め息を吐き

「ゲンマさんと俺が付き合うって言っても、何の刺激にもならないのでは…?」

帰り際に「まあ仲良くやって。」とか言われたし。
自分達が交際宣言したからって、じゃあ俺も頑張るか!!と、なるかが疑問…。

「 いやぁ、なるでしょ?きっと焦り出すと思うけどな。」
「そうかなぁ…。関心無いんじゃ…。」
「ま、深く考えるなって!!一応“友達から”だからさ。まだ友達なんだから。」
「はあ…。」

友達ねぇ…しかし‥

 
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