≡ 連載もの・2 ≡
□たかが中忍されどイルカF
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「よ!イルカ。」
「ゲンマさん。お疲れ様です。」
教材のクナイが入った箱を抱えて倉庫に行く途中
ゲンマに声を掛けられ立ち止まった
「どう?何かカカシから聞かれた?」
口に くわえた千本を ユラユラと揺らしながらニンマリと聞いてくる
「?別に何も…。俺には何も聞く事なんて無いでしょう。」
カカシが気になるのは紅の事だろうし
イルカが誰と付き合おうが知ったことではないはず…
「まだ交際宣言から日が浅いからかなぁ…。ちぇっ、つまんない奴だな。」
「 ? 」
イルカとゲンマが「お友達」からの交際スタート
そう話を広げたのはゲンマ自身で
カカシに刺激を与えたいという事かららしいが
『カカシさんには人の恋路なんて、どうでもいい事じゃないのかなぁ‥。』
それが、いくら知った人間の恋愛でも
「 きっと 自分の事は自分で解決しますよ、カカシさんは そんな人だから。」
立ち止まって話をするには、持っているクナイの箱も重たくて
「では…。」と、立ち去ろうとした。
「あ、イルカ。そう言やあ今夜あたり どう?」
ゲンマが猪口を持つ仕草で指を口元に近づける
「あ〜…残念です。今日は受付が日付変わるまでなんです。遅くに戻る予定の小隊が有って…。」
その一組の小隊の為に イルカは一人で受付に残っていなければならない
「なんだ、誰かに代わって貰えねぇの?」
「今日の当番は皆 所帯持ちですからねぇ。申し訳ないですよ。また今度誘ってください。」
よいしょと箱を持ち直しながら
今度こそ「では。」とゲンマに笑顔を見せて離れていった。
ゲンマが思うに
カカシが何らかの行動に出ないのは
カッコつけて意地を張って…多分まだ自覚が足らないからだと思われる
『結構お似合いの二人だと思うんだがな〜。』
去って行くイルカの後ろ姿を見て 溜め息を吐いた。
***
アカデミーの仕事を終え イルカは受付に入るまでの空き時間に
今日のテストの採点を、受付近くに有る書庫で行う事にした。
ここは日当たりこそ悪いが
資料となる巻物を探しに、時折人が来るくらいで 静かでとても良い場所だ。
たまに 此処を使わせて貰う。
図書室程ではないが、大きめの机ひとつに椅子も三脚備えられている。
ただし、中忍以上の決められた者しか入る事が出来ない。
部屋に入るには鍵となる印を結ぶ。すると扉は解錠されるのだ。
部屋に入ると扉は直ぐに閉まり、開かなくなる。
イルカは机の上にプリントの束を置き 椅子に腰を下ろした。
「う〜ん…採点の前に飯が先かな。」
食いっぱぐれると、針が零時を回ってからの夕食になりそうだ
大きめの握り飯を二つ入れた巾着を出し
誰も来ない事を願いながら一つ取り出して、ひとくち頬張る。
「ん〜美味い!」
具の塩鮭が美味だった。
「…夕食?」
「 !!! んぐっ!」
誰も居ないと思っていたのに 急に声を掛けられ驚いた。
「すみません!大丈夫!?」
「〜〜〜〜ん〜。」
手を伸ばして水筒の茶を飲む
「あの、驚かすつもりは…」
申し訳なそうに背をさするのはカカシだった。
イルカは「ハァ…」と生き返り、少し涙目で後ろを振り向く
「カカシさん…驚きましたよ、勘弁してください。」
「ごめんなさい。部屋に入ると丁度大きい口開けて、おにぎり食べてたから…」
「 …… 」
イルカはカカシを暫く見つめると「ぷっ」と吹き出した
「久しぶりにカカシさんと話すのに、とんでもない所を見られたなぁ。」
クスクス笑うイルカに、少し戸惑いながら
「イルカ先生は、夕飯食べに此処へ?」
ばつが悪そうな顔をして聞いた。
「受付に入るまで空き時間が有るんで…」
テストの採点を‥と、プリントの山を見せる
「今日は遅くに一組戻るので、受付を開けていなくては ならんのです。」
「大変ですね。それで早めの夕飯?」
「はいっ!あ、カカシさんも宜しければ おひとつ如何ですか?鮭ですけど。」
そう言い巾着から もうひとつの握り飯を出し
「どうぞ」と、カカシの目の前に出した。
「いや、でもイルカ先生の夕飯でしょ?」
「大丈夫ですよ!一個が大きいから腹持ちします!て…あ、すみません。腹すいてないか…」
「いえ、頂きます。いいんですか?ほんとに。」
「!い…いいですよ。どうぞ。」
カカシはイルカから握り飯をひとつ貰うと
イルカと机の角を挟んで斜め横に座った
「さっき任務から帰って…。どうしても確認したい事が有ったんで資料を取りに…」
「部屋に入ると、大きな口を開けた俺が居たんですね?」
クスクスと笑うイルカを見ていると
何故か心が温まる。
「ずっと走りっぱなしだったので、お腹がすいていたのは確かです。」
「良かったです。大きいの二つ作ってきて。さ、食べてください。紅鮭美味いですよ!」