≡ 連載もの・2 ≡

□たかが中忍されどイルカ G
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イルカとゲンマの交際話は、二週間も過ぎた頃には誰も興味を示さなくなっていた。
これと言って進展は無さそうで、イルカもゲンマも相変わらずだからだ。

皆それぞれ任務に追われ日々を過ごしていた。

「よ!イルカ!」
「ゲンマさん。お帰りなさい。」

三日前に里外任務へ出ていたゲンマが、報告書提出の為に受付へやってきた。

「ほい、お土産。帰る途中の茶屋で饅頭買ってきた。お前好きだろ?」

と、包みを差し出す

「ありがとうございます!いつも頂いてばかりで…。」
「いいってことよ。それより今夜あいてる?飲みに行かねえか?」

前回誘われた時は夜遅くまでの受付業務で断ってしまった。
なので今回は「いいですよ。」と言いたいところだったが…

「俺は良いのですが…彼女さんが、帰りをお待ちでは?」

と、小声で聞いた。

「あ〜うん。いいんだ。昨日あたりから任務で砂の国に行ってるから。…すれ違いってやつ?」

と、ゲンマがおどけてみせる。

「仕方有りませんね。では付き合いますか。」

ニシシ‥と笑い、返事をすれば

「お前の笑い方、ナルトに似てるな。」

と笑われた。

「酒酒屋で19時集合なんてどうだ?あ、もしかしたらライドウも一緒かもだけど。 」

「了解です。ライドウさんと飲むのも久しぶりなので楽しみです。」
「ん。じゃあ、現地でな。」

口の千本をピンと立て ゲンマがイルカの前から離れ部屋を出ようとした時

「あ、すまん。」

入って来る者と ぶつかりそうになる。

『て、カカシじゃん!』

カカシは チラッとゲンマを見ただけで
気にもせずに室内に入り、イルカの隣の席の者へ報告書を出していた。

イルカが少しガッカリしているように見える。

ゲンマは、部屋を出る間際に今一度イルカに声をかけた。

「イルカ!19時に酒酒屋な!!」
「え!?あ、は、はいっ!!」

何となく気になり、イルカはカカシの様子を盗み見る。
カカシは カカシの報告書をチェックしている、イルカの隣の男の手元を黙って見続けていた

『だよ‥な。俺とゲンマさんが飲みに行こうが関係ないよな。』

紅が来ると言うのなら まだしもだ。

でも いつも受付二ヶ所が空いていたら、大概は自分の方に提出してくれてたのに。

『‥ゲンマさんが居たから気を使ったのかな。』

そんな“気”など カカシには使って欲しくはなかった。
いつでも自分の所に提出して欲しいのに。

『カカシさんの報告書を、お疲れ様でしたって受け取るくらいは許されるだろ?』


秘めた思いを吐き出すわけではなく
心に頑丈な鍵を付け「思い」を閉じ込め

あの人が書いた綺麗な文字を、文章を
そっと指先でなぞって愛でるだけ

それも ひとつの「幸せ」なのに


「はい。不備無しです。… えっと…はたけ上忍?」
「 ! ああ ごめん。考え事してた。うん ありがとう。」

カカシは 隣の受付で下を向いて書類を整理していたイルカを見ていた

気のせいか、少し暗い表情をしていたから。

『ゲンマと飲みに行くらしいが…。』

聞こえよがしにゲンマが戸口から、19時に酒酒屋と言っていた。

『…それを俺に聞かせて、どうしろって言うんだ?』

行きたいとも思わないし、二人で好きに飲めばいい。

イルカが顔を上げようとしたので、ふいっと顔を逸らし そのまま部屋を出て行った。



***




「おーい!イルカ、こっちこっち!」

ガヤガヤと賑わう居酒屋の店内
イルカは手を振っているゲンマを発見するとニッコリ笑って近寄って行った。

「お疲れさん。」
「お疲れ様です。あれ?ライドウさんは、まだですか?」

ゲンマの向かいの席に座り、隣の空いてる椅子の上にカバンを置いた。

 
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