≡ 連載もの・2 ≡
□たかが中忍されどイルカI
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カカシはゲンマに跨り拳を上げて
ただならぬ形相で彼を見下ろしていた。
「…あんた…イルカ先生と付き合いたいんじゃなかったのか?」
「 え?いや あれは…」
「あの人の優しさを、踏みにじる真似は許さない。」
段々と状況を把握してきたゲンマは
やっと驚きの心境から我に返り、逆にカカシを呆れた顔で見返した。
「カカシよぉ…お前 やっと自分の気持ちに気付いたのか?」
「 何を… 」
「お前の その拳がさぁ、イルカが好きで堪らないって言ってるぜ?」
「馬鹿な、あんたこそ先生と…」
退けろよ とゲンマが体を起こすと
カカシは容易く自分の体を退いた。
「白状するよ、俺達の“友達から”の交際宣言は嘘!」
カカシは神妙な顔でゲンマの言葉を聞いていた
「お前がイルカを好きだと自覚させる為の俺の作戦。で、この子は俺の彼女。」
小柄で髪の長い彼女がカカシにペコリと御辞儀をした。
「さっき帰ってきたばかりで、コテツからイルカんち泊まったらしいって聞いたようでさ。」
「イルカ‥先生は…先生の気持ちは?」
「俺に気が有るわけないじゃん!わかんねぇかな、お前ら両思いだぞ!」
カカシは 今何を言われたのか把握出来なかったかのように、目をぱちくりとさせた
「 イルカは前からカカシの事が好きだったみたいだぜ?」
ゲンマが言った事を 直ぐに理解出来なかったのか
しばらく固まったまま黙り込んでいた。
「…イルカ‥先生が?俺を?」
漸く口を開いたカカシの耳と頬が 少し朱に染まる
「だよ。イルカは お前が好き。‥お前もだろ?カカシ。」
「俺は…」
「あいつはハッキリ好きだと言ってやんないと分かんない奴だぞ?」
何か考えるかのように、カカシは押し黙り地面に視線を落とす
「んじゃ、俺は行くわ。ちゃんとイルカに気持ちを伝えろよ?誰かに持ってかれる前にな!!」
ハハッと短く笑い
「イルカとの“友達からの交際”は、お前と交代するよ。任せるぜ。」
そう言いウィンクをすると、ゲンマは彼女の肩を抱いて行ってしまった。
『先生が俺の事…』
スッと前を見据えたカカシは、唇をキュッと結び
アカデミーの方向へ走り去った。
午後の授業は眠気に勝てず、うつらうつらする生徒がチラホラ居るものだ。
それが体術などの体を使う内容ではなく
今 こうして「忍びの心得とは…」などと、教科書片手に教えている時は特に。
今日は天気も良く、外の木々の葉も 風にそよいで気持ちが良さそうだ。
『と、いかんいかん!俺まで眠くなりそうだった!!』
顔をプルプルと左右に振り、子供達の(いや、自分の為でもある)眠気覚ましに窓を開ける事にした。
「さて、教科書十二ページから十四ページをノートに書き写すように。」
イルカは窓辺に近寄り、静かに窓を開け放した。
風が暖かく気持ちが良い
「 ! カカシ…さん。」
近くの木の上でカカシがしゃがんで此方を見ていた
「どうされたのですか?」
思いがけずカカシの顔が見れたので、つい破顔一笑して問いかけた。
そんなイルカの笑顔が、カカシの胸をギュウッと鷲掴みにする
本当に 自分はイルカが好きなのだと実感するのだ
「…先生に早く会いたくて。顔を見に来ました。」
「え?俺の顔ですか!?何故また…?」
キョトンとする顔も愛しくて、カカシは思わずクスッと笑う
「ゲンマと交代してきました。」
「?交代?任務ですか?」
「任務なんかじゃありませんよ。」
「 ? 」
カカシが何を言いたいのか、さっぱり検討がつかない。
「“友達から”の お付き合い、俺としてくれませんか?イルカ先生。」
「え…?」
そうしてカカシは初めてイルカに告白した。
「あなたが好きです。」 と