≡ 連載もの・2 ≡

□雨は静かに降る2
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火の国 木の葉隠れの里から
水の国への婿入りが決まった俺は
アカデミー勤務以外の仕事(任務)は全て外された。

その代わりと言っちゃあ何だが、いろんな所から「送別会」と称して飲みに誘われ忙しくなっている。

「俺はイルカの受付じゃないと、報告書出したくねぇよ〜。」

と、大袈裟に嬉しい事を言ってくれる人も少なくなく
皆 気を使ってくれているんだなぁ…と嬉しくなる。

今日は これから 同期の仲良しメンバーで飲み会だ
少し遅くなったので、学校から直行する

「あら、イルカ。」

集合場所の居酒屋へと急いで走っていると声をかけられた。
振り向くと、紅さんがいた。

「 ! 」

上忍仲間で飲みに行くのだろうか。アスマさんやガイさん…そしてカカシさんも一緒だ。

「こんばんは。皆さんお揃いで飲みにでも?」
「ええ そうなの。貴方も忙しそうね。」
「はい…。」

俺は紅さんを見て会話をしていたが、その実 視界の中のカカシさんを気にしていた。

カカシさんは静かに俺を見ている。

「イルカ!婿入りする前に、俺達とも飲もう!!めでたいなぁ!!」

ガイさんが近づいてきて、俺の両肩を掴み「おめでとう!」と言ってくれた

「今度良い店を探しておくから、体あけとけよ?」


アスマさんが優しい顔で言ってくれた。

「……。」

カカシさんは、黙って俺を見ているだけで
そのうち ふいっと視線まで俺から外した。

俺は少し切なくなる

「あの…では、失礼します。今日は同期の奴らと待ち合わせてますんで…」
「あら、ごめんなさい。行ってあげて。」
「はいっ。皆さんとの宴会も楽しみにしています!」

俺は ぺこりと御辞儀をして その場を去った。


なんとか仲間を待たせずに時間通りに店に着き、個室へと通される。

「お待たせ…」

襖を開けた途端

「おめでとう!!イルカァー!!」

パァーンッ!とクラッカーが一斉に鳴り、ヒューヒューと囃し立てられ拍手で迎えられた。

「…勘弁してくれよ…たかが結婚くらいで…。」
「なんだよイルカ!涙ぐんでる場合じゃないぞ!!さ!飲むぞ!!」「う…うん。」

仲の良い六人で こうして集まって飲むのも久しぶりだ。

「イルカが結婚かぁ。」
「これで花の独身組も残り二名か!!」
「まさかイルカに先に越されるとは思わなかったぜ。」
「しかも玉の輿と来たもんだ!」

アハハ!と、酒も会話も弾み ともすれば沈みがちになりそうな俺の心も大分晴れてきた。

そんな時、仲間の一人が こう言った。


「お前せっかく“写輪眼のカカシ”に懇意にして貰っていたのになぁ。」
「そうそう!勿体ないよなぁ。あちらも残念がるんじゃね?」
「だよなぁ、可愛がってた後輩居なくなるんだからさぁ。」

可愛がってた後輩…か。
ふと、あの雨の日の告白を思い出す

『初めて会った時から…』

カカシさんは、俺の事を…


俺達六人は予想通りのバカ騒ぎをして、その夜を終わらせた。

帰り道、仲間と別れて独り夜道を歩けば
ホーホーと、遠く森から梟の鳴き声が聞こえてくる。

木の葉の里は、隠れ里
周りは深い森に囲まれている

俺は そんな里が大好きだ。

「大好き…なのに。」

父ちゃんと母ちゃんと一緒に生活していた里だ
独りぼっちになった俺を我が子のように厳しく優しく接してくれた 三代目が居た里だ

苦楽を共にした仲間や、アカデミーの教え子達
紅さんやアスマさん達 優しい上忍の皆さん。 そして

「 カカシさん…。」

歩き続けていた足が止まる

カカシさんと飲むようになって、一緒に楽しい時間を沢山過ごしてきた。
彼の好きな食べ物や、苦手な食べ物まで覚えてしまった。
もちろん多分 俺の好物から趣味まで…


 
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